宝石を散りばめたように美しく輝く夜景、みなさんも一度は撮影してみたい写真のひとつではないでしょうか。近年ではスマートフォンのカメラ機能も向上し、手軽に夜景撮影ができるようになりましたが、やっぱり一眼カメラで夜景を撮ると、スマホでは再現できない本物の写りを楽しむことができます。ここでは初心者にもわかりやすく夜景撮影のポイントをご紹介したいと思います。
夜景と言ってもシーンはさまざま
夜景と言えば高層ビルや展望台から見下ろす街明かり・・・を真っ先に想像すると思いますが、夜景にもさまざまな種類があります。
近年人気がある工場夜景も夜景撮影の1つですし、自然と人工物の融合である写真や夕暮れや日の出前の空が明るいマジックアワーを入れた写真、桜や紅葉、滝、建物などをライトアップした写真も夜景写真の1つと言えます。
夜を夜らしく美しく撮るのが夜景写真であり、さまざまなシーンに応じた条件で撮影できれば一人前です。
夜景撮影に必要なもの
夜景の基本はスローシャッターでの撮影になりますので、三脚が必要です。カメラに触れずにシャッターが切れるレリーズもあると便利ですが、なければセルフタイマーで代用できますので、無理に準備する必要はありません。
三脚が立てられない場所で撮影する場合や、三脚を使わず撮影する場合は、絞りを開放してISO感度を上げれば手持ち撮影も可能です。デジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラはイメージセンサーが大きいため、ISO感度を上げても画質が低下しにくいので、ある程度の明るさがあれば十分手持ち撮影もできますね。
きれいな夜景を撮りたい場合、まずはカメラと三脚だけあればOKですので、三脚を準備するようにしてください。
夜景撮影のカメラの設定
次にカメラの設定ですが、カメラの中には「夜景モード」などを搭載しているものもありますが、ここでは正統派のマニュアル撮影モードを覚えましょう。マニュアル撮影モードの撮り方を覚えると後々融通が利くので、さまざまなシーンにも慌てず撮影することができます。
まずは三脚を使用する一般的な夜景撮影の設定を見てみましょう。
撮影モードはマニュアル「M」を選択します。マニュアルモードは絞り、シャッター速度、ISO感度など、全ての設定を手動で行うモードです。
次にF値はF8を選択します。レンズの特性にもよりますが、F8前後は最も画質が良くなるおいしい部分なので、夜景を含めて風景全般を撮るならF8くらいで撮影するといいでしょう。ISO感度も基準感度に近い100か200を選択します。
ホワイトバランスは任意でOKです。ピクチャースタイルは風景に合わせておくと色が鮮やかになりますが、自然相手な被写体の場合はスタンダードやニュートラルにしておきましょう。RAW形式で記録する場合は後から現像ソフトで編集できますので、何を選んでもらっても構いません。
シャッター速度は被写体の明るさやシーンに応じて変えます。明るい被写体の場合は短めに設定し、暗ければ長めにします。
手ぶれ補正機能は三脚に乗せる場合は不要ですのでOFFにしておきましょう。
F値・シャッター速度・ISO感度・ホワイトバランス・・・って何? そのあたりが理解できない方は、まず下記のリンクより基本的な用語を勉強しましょう。
夜景を撮影してみましょう
街明かりなど比較的明るい被写体の場合は、わざわざマニュアルフォーカスにしなくても、オートフォーカスでピントを合わすことができます。ピントを合わせたい場所にAF枠を決め、シャッターボタンを半押しにすればピントが合うはずです。
レリーズを装着している場合はそのままシャッターボタンを押し込んで撮影しましょう。レリーズを持っていない場合はセルフタイマーを2秒後にセットすると手ぶれを抑えることができます。
最初はシャッター速度を10秒に設定し、まず1枚撮影してみます。仕上がりが明るすぎる場合はシャッター速度をもう少し速くし、仕上がりが暗すぎる場合はシャッター速度をもっと遅くします。
マニュアル撮影を行うと「測光」というのをカメラが行い、インジケーターに露出の目安が表示されます。ファインダーやカメラの液晶画面に、下の図のようなメーターがあるのをご存知でしょうか。
これは露出計といいまして、適切な露出をするための指標となります。構図を決めてシャッターボタンを半押しにすると、ピント合わせと同時にファインダー内の明るさを計測し、露出計に表示されます。針が中央(ゼロ)にくるようにシャッター速度を調整していきます。
夜景の場合は明暗差が大きいため、露出計の値の正確さはあまり期待できませんが、おおまかなシャッター速度を決める目安となりますので、是非使ってみてください。
夜景は同じ構図を撮影条件を変えて何度も撮る
明るさがちょうどよく、基準となるシャッター速度を決めたら、そこを中心にして撮影条件をいろいろ変えて撮ってみましょう。
シャッター速度を少し速くすると暗めの写真に仕上がりますし、遅くすれば明るい写真になります。撮影するシーンや条件によっては、自分が思っているより明るい(暗い)ほうが良かったりする場合もあり、液晶画面でチェックする画像と、家に戻ってパソコンのモニターなどで見る画像とはイメージが異なることもありますので、最低でも5枚以上は同じ構図でも条件を変えて撮ることがポイントです。
フィルム写真と違って、後から簡単に削除できますので大胆に条件を変えて撮ってみてもいいでしょう。
手持ちで夜景を撮影する場合は
三脚を置いてじっくりと時間をかけて撮影するのが本来の夜景撮影の楽しみですが、条件や場所によっては三脚を置いて撮影できないケースもあるかと思います。また、スナップ写真のようにフットワーク良く歩きながら撮影するときなどは、三脚を使っていては邪魔になります。
あえて手持ちで夜景を撮影する場合は、手ぶれがネックとなってきますので、速いシャッター速度と高ISO感度がポイントになります。手持ち撮影する場合は以下のような設定を基本としましょう。
まず、撮影モードはマニュアルではなく、絞り優先モードにします。F値は解放(そのレンズで目いっぱいF値を下げられる数値)にし、できるだけ光をたくさん取り込める状態にします。
ISO感度は400~6400くらいが実用範囲で、シャッター速度が1/15秒(望遠レンズは1/60秒)より速くなるように調整しましょう。ISO感度を調整しながら、ブレないぎりぎりのシャッター速度になるように合わせていきます。ISO400でブレるようならISO800に、それでもブレるようならISO1600に・・というように、徐々にISO感度を上げていきます。
また手ぶれ補正などがついているレンズやカメラであれば、必ずONにします。
明るい単焦点レンズほど手持ち撮影は有利になりますが、センサーサイズの大きい一眼レフ・ミラーレス一眼カメラならISO感度を1600程度にしても大きく画質は低下しません。ブレブレの写真になるよりは、少しくらいノイズのある写真の方が全然マシなので、大胆にISO感度を上げて撮影しましょう。明るさの調整は露出補正を使うと便利です。
一瞬の表情を捉えるために、あえて高速シャッターで夜景を撮るテクニックもあります。
夜景撮影の応用
基本的な夜景の写真が撮れるようになったら、少しこだわった作品づくりにもチャンレジしてみましょう。
キラキラした玉ボケを撮る
闇の中にキラキラ輝くイルミネーションや夜の光は、玉ボケにするにも最適です。近くの被写体に近づいたり、望遠レンズを使うなどして遠近差を大きくし、玉ボケを撮ってみましょう。
イルミネーションがある場合は、一部分だけにピントを合わすことで手前と奥をぼかすことできます。望遠レンズでは容易に玉ボケを作ることができますが、広角レンズの場合は絞りを開放して、できるだけ近くの被写体に近づいて撮影することで奥をきれいにぼかすことができます。
被写体の中にキラキラしている点光源さえ入れることができれば、実は結構簡単に玉ボケ写真を作ることができます。
また、フォーカスをマニュアルフォーカスにして、意図的にピンボケにさせて玉ボケを撮影する方法があります。手前に何も被写体がない場合は、全体をピンボケにさせるだけで幻想的な玉ボケ写真を簡単に作ることもできます。
上の写真のように少しピントをずらして撮影すると、ちょっと雰囲気の柔らかい作品に仕上げることもできますね。
ブルーアワーやマジックアワーを上手に使う
日がどっぷり沈んでからの撮影も楽しいですが、夜景の撮影で最も美しいのが、だいたい夕暮れから日没(日の出前から日の出)までのブルーアワーやマジックアワー・トワイライトタイムと呼ばれる時間帯です。 この時間帯は空の色のグラデーションが美しく、夜景も空も楽しめる一番おいしい時間帯です。特に夕暮れ(朝焼け)の方向に被写体がある場合は積極的に空と夜景のコラボレーション写真を撮りましょう。
日没・日の出前後は空と夜景の2つが楽しめる美しい時間帯です。これもマニュアル撮影モードでF値とISO感度を固定しながら、シャッター速度を調整して撮影します。
スローシャッターと高速シャッターを使い分ける
夜景だから絶対にスローシャッターにしなければならないということはなく、シャッター速度を調整ながら撮ることもあります。例えば車のライトなどを流しながら撮りたいときはスローシャッターにし、一瞬の表情を捉えたいときは、あえて高速シャッターにすることもあります。
上の写真は露光時間は15秒。車の姿は見えずに明るいテールランプだけが流れて撮影できます。
上の工場の写真は露光時間は20秒、水蒸気がダイナミックに流れる姿が撮影できます。
この写真は露光時間が1/4秒です。水蒸気がモクモクと湧き上がる姿が捉えられます。
ホワイトバランスを大胆に変えてみる
上の写真は1枚のRAW画像をホワイトバランスだけ変えて現像しました。全く同じ構図ですが、色あいがそれぞれ違いますね。一番上はオートで撮影した一番自然な(見た目に近い)写真です。真ん中は空のブルーっぽく仕上げた写真で、一番下は紫色に仕上げた少し幻想的な写真になりました。
このようにホワイトバランスの調整だけでも写真の雰囲気が変わります、JPEGで撮影する場合は、様々なホワイトバランスで撮影してみてもいいかもしれません。RAWで撮影する場合は現像ソフトでいろいろ変えてみても面白いでしょう。
夜景撮影のマナーや注意点
夜景撮影について一通りご説明させていただきましたが、今度はやってはいけないポイントや注意点などをご紹介いたします。
撮ってよい場所かどうか確認する
夜景でも何でもそうですが、立入禁止や撮影禁止の場所で撮るのは論外です。人より違う写真を撮りたい気持ちは分かりますが、人としてのマナーは守るようにしましょう。
また、極端な望遠レンズで一部を撮影するなど、盗撮を疑われるような行為も注意しなければなりません。住宅地区などを撮影するときは十分配慮するようにしてください。
三脚を使ってよい場所かどうか確認する
展望台や展望フロアなど、特に室内で夜景を撮影する場合、その場所で三脚の使用ができるかどうか確認するようにしましょう。特別観覧などで人が多い場所などは、三脚を禁止していることがあります。
屋外では三脚禁止の場所は少ないですが、寺院や重要文化財などのライトアップを撮影する場合、敷地内や建物内が三脚禁止になっていることがあります。トラブルにならないためにも事前に確認しておきましょう。
また三脚禁止でない場所でも、例えば人通りが多い場所や、人や車の通行の妨げになるような所では、常識的に三脚を使ってよいかどうか判断しましょう。
ストロボ・フラッシュは使わない
よく夜景に向けてストロボを使って撮影している人がいますが、夜景ポートレート(夜景と人を一緒に写す)以外はフラッシュを使っても届きません。素人感丸出しなのでストロボは使わないようにしましょう。
展望台や展望フロアではフラッシュの使用を禁止しているところがあったり、たくさんの人が並んで夜景を撮影しているようなところでは、フラッシュの光が迷惑となることがあるので注意しましょう。
さまざまなマナーについては、下記もご覧ください。
バッテリー切れに注意
夜景撮影では構図決めや条件の設定などに時間がかかります。特にライブビュー撮影を多用する場合はすぐにバッテリーがなくなってしまいます。節約しながら撮影をするか、予備のバッテリーや外部電源を準備するなどして、バッテリー切れを防ぎましょう。
バッテリーを長持ちさせるコツや外部電源については、下記でもご紹介しております。
長時間露光はしっかりした三脚を
運動会用などの安いファミリー三脚などは、夜景を撮るための長時間露光には向いていません。特に屋外などで撮影する際は風などの影響も受けやすくなります。できるだけしっかりした三脚を準備しましょう。
強い光源はフレームに入れない
明るくて眩しい照明が近くにあると、フレアと呼ばれる現象が起き、極端にコントラストが低下して白っぽくなってしまいます。できるだけ強い光源はフレームに写り込まないように注意します。どうしてもその方向しか撮れない場合は、少し構図を移動するなどして、フレームから光源を外すだけでも効果が大きいです。
レンズフードがあれば、横からの強い光に対してある程度ブロックしてくれます。夜景撮影にもレンズフードを使うようにしましょう。
また、フレアやゴーストについては、下記でも詳しく説明していますので、ご覧ください。
夜景の撮影方法・撮り方のコツ まとめ
- 夜景と言ってもさまざまなシーンがある
- スローシャッターで撮るなら三脚が必要 なければ手持ち撮影もできる
- 三脚を使う場合は低感度で程よく絞りながらスローシャッターで撮影
- 手持ち撮影の場合は高感度で絞りを開放にしてシャッター速度を稼ぐ
- 応用的な撮影テクニックも多いので、慣れたら遊んでみると面白い
- 注意点も多いので撮影には気を付ける
夜景の撮影は三脚とマニュアル撮影の基本ができていれば簡単に撮影できます。しっかり撮影できればスマホとは比べ物にならないほどの高画質で撮ることができますので、コツをマスターして素敵な夜景写真を撮ってみてください。