撮影した写真をカメラの液晶画面やパソコンやスマホで見てみたとき「なんだか色の雰囲気が違う」と感じたことはありませんか?もしかするとホワイトバランスが間違っていたり、意図しない設定になっているのかもしれません。
ここでは白いものを白く撮影する基本である、ホワイトバランスについてご紹介したいと思います。
世の中にはたくさんの色の光がある
ホワイトバランスの話をする前に、光源について少しご説明しておきたいと思います。
光の色というのは、すべて同じ色ではありません。白い光もあれば青っぽい光もありますし、黄色や赤みがかったものなど、世の中にはたくさんの光であふれています。太陽光が降り注ぐ日中の屋外、曇りの日、夕方、蛍光灯の室内、ぬくもりのある白熱電球でのレストラン・・・などなど、そのシチュエーションたくさんあります。
上の写真はごく一部ですが、世の中の光はさまざまで、自然光もあれば人工的な光も多くあります。
例えば、真っ白なボールを様々な光の状況下で置いてみたとします。それを見てみてください。
人間の目はある程度照らされる色がかわったとして、白いものは白色と認識出来ます。日中の屋外でも、室内でも、ちょっと暗い場所でも、たぶんこれは白いボールだと認識できるでしょう。それは人間の脳の中で、光源の色を判断して、白いものを白と判別しているからです。
しかしカメラは人間の脳や目ほど高性能ではないので、何も考えずにそのまま撮影してしまうと、出ている色をそのまま画像として記録してしまいます。そうなると自分の見ていた、思っていた白色とは違う色になってしまうことがあります。そのためカメラに正しく白の基準を設定してあげることが必要なのです。
カメラは白いものを白と認識できないので、白の基準を設定してあげる必要がある
写真の白さはホワイトバランスで調整する
白の基準を設定は、カメラのホワイトバランスというもので調整します。ホワイトバランスは日本語にすると「白のつり合い・調和」という意味があり、白のバランスを正しく調整し、写真に写すことが自然な色合いを出すための基本と言えます。
「白は白でしょ、何を言ってるのだか?」と思われると思いますが、下の写真の一覧を見てみましょう。
上のさまざまな写真は、白い皿に白いコップ、白いティッシュを机の上に置き、ホワイトバランスをいろいろ変えて撮影してみました。中には不自然な色があるのに気づくかと思います。
撮影したときの照明は昼白色のLED電球を当てているので、実際には太陽光に近い色で照らしています。ホワイトバランスの設定が太陽光だと自然な白さが出ているように見えますね。日陰の設定では黄色っぽくなっていますし、白熱電球の設定では青っぽく見えてますね。蛍光灯の設定では、ちょっと紫っぽいような色に見えたりします。
このようにホワイトバランスを変えてしまうと、自分のイメージしているような白い写真になることもあれば、まったく意図しない色合いになってしまうこともあります。
カメラには「オートホワイトバランス」という便利な機能がある
便利な機能としてオートホワイトバランスというものがあります。オートホワイトバランスは、カメラがファインダーに写る色や光源を考慮して、自動的に自然な白になるようにホワイトバランスを調整してくれるというものです。人間の目ほどではありませんが、かなり優秀な機能なので、普段はオートに設定しておけば失敗は少ないかと思います。(上記の写真でもオートで撮影したものはとても自然な白色が発色されています)
被写体に当たっている光の色に応じてホワイトバランスを調整するとよい
ホワイトバランスは白以外の色も変わる
さきほどの写真は、あえて白い皿やコップなどを並べて比べてみましたが、「白いものが写っていなければホワイトバランスを調整しても関係ないのでは?」という疑問が出てきますよね?
では下の2種類の写真を見てみましょう。
菜の花とミツバチの写真ですが、左はホワイトバランスを太陽光に設定し、右は白熱電球に設定してみました。もちろんこの写真は太陽光が降り注ぐ中で撮影しましたので、左の写真のほうが自然に見えます。右は春っぽさがなくなって、寒いイメージに見えますね。
よく見ると、写真の中に白い要素はほとんど入っていませんよね。ホワイトバランスを変えると白以外の色にも大きく変化が出るため、白が写っていないからといって、適当なホワイトバランスにしてしまうと、写真全体の色のバランスがイメージと異なってしまいます。
これは、ホワイトバランスが白色だけを補正するのではなく、光が当たっている色を考慮して全体を補正しているからです。
上のような料理の写真も、左はホワイトバランスの設定を曇りにして撮影、温かくて美味しそうに見えます。右は白熱電球の設定にして撮影、何だか冷めておいしくなさそうに見えます。
ホワイトバランスの設定で重要な色温度とは
色温度とは光源の色をケルビン(K)という単位で表したものです。数字が低いほど黄色っぽくなり、真ん中くらいを白、数字が高いと青っぽくなります。
ろうそくの火や夕暮れ、日の出時の光などの赤っぽい色は2000K程度、日中の屋外では5000~7500Kです。部屋の中で蛍光灯やLED照明の光は昼白色で5000K、昼光色で6500K程度、白熱電球の光や電球色のLED照明はオレンジから黄色なので3000K程度と、撮影する場所によって光の色が違います。
ホワイトバランスは光が当たっている色を補正する役割があるので、赤から黄色っぽいロウソクや電球の光は青っぽい色に補正し、逆に晴天時や日陰などは光が青いので黄色い色に補正を行います。
ホワイトバランスの設定方法
ホワイトバランスの設定は、カメラ側のホワイトバランス設定を変更することで行えます。きっちり撮影するなら、撮影する場所の光源の色温度を色彩照度計などを使って計測し、その色温度をカメラで設定するのが本来のやり方ですが、初心者の方はそこまでこだわる必要はありません。
カメラにはホワイトバランスのプリセット設定というものがあり、主に撮影するシーンに合わせたものが何種類か用意されています。
また、右の図のように任意の色温度に設定することも可能で、細かく色温度を調整することもできます。
AWB(オートホワイトバランス)に設定すれば、カメラが被写体の明るさや光源の色などを考慮し、自動的に最適なホワイトバランスに調整してくれます。光源が変わってしまう普段のスナップ写真などは、AWBに設定しておくと便利です。
RAWで撮影すれば撮影後でもホワイトバランスを変更できる
写真を記録する方式には主にJPEG(ジェイベグ)という形式のほか、RAW(ロー)という形式で記録することができるカメラがあります。RAW形式については、別のコーナーでも詳しく解説していますが、RAW形式で記録された画像は、画質を劣化させずにホワイトバランスを変えることもできます。
仮に撮影したときに間違ったホワイトバランスで記録してしまった場合でも、後から現像ソフトなどで任意のホワイトバランスに変更することもできますので、様々な色合いの写真を仕上げたい場合は、ぜひRAW形式での保存をおすすめします。
オートホワイトバランスの注意点
さまざまなシーンでも賢く使えるオートホワイトバランスですが、実は苦手なシーンも多くあります。
例えば夜景など周りが暗く一部分だけが極端に明るい被写体だったり、全体が似たような色(特に空や一色の壁など大半の被写体など)だと、カメラが何を基準に白にすればよいか分からなくなるため、そのような被写体の場合は、見た目の色とは全く異なる写真に仕上がってしまう場合もあります。
次にホワイトバランスを蛍光灯にして撮影、見た目のような色合いに仕上がりました。
一度撮影してみて、納得がいかないようなら異なるホワイトバランスに設定し直して撮影するとよいでしょう。
教科書通りではなく、大胆にホワイトバランスを変えてみるのもあり
ホワイトバランスはできるだけ自然(見た目)に近いように、白の基準を調整することを言いますが、言い換えてみれば、ありえないような色温度に設定することで、現実離れした作品にしてしまうことも1つの方法です。
人の肌を写すようなポートレート撮影や、料理の写真などは、できるだけ忠実な色を再現する必要がありますが、風景や夜景、人工物などは、あえてホワイトバランスを大胆にいじってみると、いつもとは違う仕上がりになり、写真撮影の楽しみが増えるのでないでしょうか。
上の写真は、ビルの上から撮影した夜景です。見た目に忠実な写真は左側ですが、あえて赤みを強くすることで、右側のように暖かい雰囲気の写真に仕上がります。
夕暮れの写真も本来は左側のようなシーンですが、あえて青っぽくすることで、幻想的な雰囲気を出すこともできます。
どんなことにも正解はありませんので、自分なりの色を見つけてホワイトバランスを調整してみるのもよいかと思います。
ホワイトバランスとは まとめ
- ホワイトバランスは自然な色合いになるように設定するもの
- ホワイトバランスを変えることで、写真の色合いを変えることができる
- ホワイトバランスは「白」以外の色も大きく変化する
- 通常の撮影はオートホワイトバランスにしておけばOK
- RAW形式で記録しておけば、後から劣化させることなく色合いを変えられる
- オートホワイトバランスは苦手なシーンもあるので注意する
- ホワイトバランスの設定は、大胆に変えることで雰囲気の違う作品にすることもできる
初心者が失敗するケースとして、ホワイトバランスの設定を正しくしていないため、変な色の写真になって後悔してしまうことが多いようです。ホワイトバランスの仕組みを理解して、さまざまな色合いの写真撮影に挑戦してみてください。