基本編で工場夜景の撮影方法をマスターしたら、少し応用的な撮影をしながら作品の幅を広げてみてはいかがでしょうか。工場夜景は設定を変えるだけで写真の仕上がりも大きく変わってくるため、慣れてきたらさまざまな条件や構図で撮ってみるのも楽しみの1つです。
ここではより実践的な撮影方法についてご紹介していきたいと思います。
絞り値を変えて光芒を出す
夜景を撮る一般的な絞り値はF8前後と言われていますが、絞り値を可変させることで光芒の形を変えることができます。ふわっとした印象に仕上げるならF値を開放して撮影し、鋭いウニウニの光芒を出すのであればF値をさらに絞り込んで撮影します。
レンズや絞り羽根の構造、枚数によっても光芒の出方は変わりますが、最近のレンズよりも古いオールドレンズの方が美しい光芒が出るものもあり、夜景撮影だけのためにオールドレンズを買う猛者もいらっしゃるようです。絞り羽根がが偶数の場合は星のような光芒となり、奇数の倍はチクチクしたウニのような光芒になります。また、絞りを開放しながら近くの被写体にピントを合わせることで、夜景の明かりをぼかすといったこともできますので、絞り値をいろいろ変えながら試してみましょう。
ISO感度を上げて動きを止める
夜景の撮影は低感度で長時間露光が基本ですが、あえてISO感度を高感度にして高速シャッターで撮影する方法もあります。
高速シャッターで動きを止めることで、水面に揺れるリフレクションを止めたり、豪快に噴き出す水蒸気や煙を止めることもできます。感度を上げることで画質は犠牲になるものの、普段の長時間露光とはまた違う雰囲気の写真が撮れるのも魅力の1つです。
また、クルージング船など乗り物に乗りながらの手持ち撮影や、強風でカメラがぶれてしまうときなどの応急用として撮影することも可能。デジタル一眼レフ・ミラーレス一眼カメラであればISO1600程度まで上げてもそれほど画質の劣化は見られないので、明るいレンズを組み合わせて開放側で撮ることで、1/50秒など相当速いシャッター速度で撮影することも可能です。
シャッター速度を1/5より速くすると、このようにモクモクと出る水蒸気を止めることができ、臨場感あふれる写真になります。
流れる車のライトの光跡を入れてみる
工場夜景は工場だけを撮る必要はなく、周りにある景色や被写体にも目を向けるのもポイントの1つです。工場の周りには道路がたくさんあるため、工場の風景と道路を走る車を一緒に撮ってみるのもよいでしょう。せっかくの長時間露光なので、車の通る光跡を一緒に入れると写真にインパクトが出てカッコよくなります。
撮影者が2人以上の場合は、シャッターを押すのをお願いして、自分で車を走らせて撮る人もいらっしゃいますので、是非試してみてください。
こちらは川崎では定番の工場夜景スポットですが、工場と一緒に並ぶ直線道路に車が走ることで、ヘッドライトやテールランプの流れるレーザービームが撮影できます。タイミングを見計らってシャッターボタンを押しましょう。も回ってみるといいでしょう。当然冬場のほうが夜が長いので長時間楽しめます。
直線ではなく、道路がカーブになっている場所でも面白いですね。とにかく道路を見つけたら通っていく車を待ちながら撮影するのも楽しみの1つです。くれぐれも通行車両の邪魔にはならない場所で撮影するようにしてください。
水面反射をうまく利用する
工業地帯は沿岸部や埋め立て地に建設されていることが多く、多くの工場夜景スポットでも、水面と一緒に撮影できるケースがあります。せっかくなので水面と一緒に撮影し、水面反射を入れながらシンメトリー構図の写真を撮ってみましょう。風がなく水面が落ち着いているときは、鏡のような風景を撮ることもできますし、雨上がりなどは水たまりの反射を使って幻想的な写真を撮ることもできます。
上の写真は雨上がりの水たまりを使って反射させた一枚。水たまりの場合は超ローアングルで撮影する必要があるため、ミニ三脚などがあると便利。
バルブモードにして、さらに長時間露光で撮影してみる
よほど暗い被写体でない限り、露光時間が30秒を上回ることはありませんが、月夜や夜明け前、日没直後などは、流れる雲を躍動感ある画にしてみたり、水面を超滑らかにするために、1分や2分などの超スローシャッターで撮影する方法もあります。この場合は状況に応じて絞りを絞り込んで撮影したり、薄めのNDフィルターをつけるなど、少し工夫しないといけませんが、成功すると躍動感ある作品に仕上げることができるようになります。
雲が速い速度で流れていたため、できるだけシャッター速度を遅くするように絞り込んでから最低感度で撮ってみました。1分を超える露光だったため、雲が筋状に流れてくれました。雲が綿雲のようになっているときがチャンスです。
一部だけを切り取ってアップにしてみる
工場夜景写真を撮影していると、どうしても設備全体をフレームにいれてしまいがちですが、あえて設備の一部だけを切り取ってしまうのもアリです。アップで撮ってみると、パイプや設備の1つ1つのディティールが映えて迫力ある写真に仕上がります。
複雑な設備を見つけたらぜひアップで撮ってみてください。
工場夜景の撮影方法・撮り方のコツ(応用編) まとめ
- 絞り込むことで照明の光の光芒を鋭く、絞りを開放すれば柔らかい印象に
- ISO感度を大胆に上げれば、水蒸気や煙の流れを止められる
- 絞りを開放してISO感度を上げれば、手持ちの撮影も可能
- 道路と一緒に撮影して、流れる車のライトの光跡を入れても面白い
- 水面反射を利用すると、美しいシンメトリー構図の写真も撮れる
- 1分以上の露光で雲を流しながら水面を滑らかにする
- 一部だけを切り取って表現しても面白い
基本的な撮影方法が理解できたら、自分なりに設定や構図を変えながら、人とは違う一枚を撮ってみるのも面白いです。工場だけにとらわれず、空や水、周りの被写体などもうまく取り入れながら撮影してみると、また違う発見があるかもしれません。上記を参考に工場夜景の魅力を味わってみてください。