カメラのF値と絞りについて

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F値とは、絞りの開き具合(光の取り込む穴の大きさ)を数値化したもので、別名で絞り値ともいいます。絞りはレンズの絞り羽根によってその開き具合を調整することができますが、どれくらい絞っているのかをわかり易く把握するためにF値が使われます。

こでは絞り値を数値化したF値と絞り羽根についてご紹介していきたいと思います。

絞り羽根は光が入る量を調整するもの

まずF値の説明の前に、絞り羽根について簡単に解説したいと思います。

デジタルカメラは、レンズを通った光を一定時間イメージセンサーに当てることで、それを画像として記録します。光がたくさん当たっている場所では明るく記録されますし、光が少ない場所では暗く記録されます。これらの明暗差や色が画像となって記録されることで、写真として完成します。

カメラで写真を撮るときは、レンズから通った光がレンズ内の穴を通ってイメージセンサー届きますが、多くのレンズは光の通る穴の大きさが調整できるようになっています。 この穴は絞り羽根という機構でできており、猫の目のように大きくしたり小さくしたりできます。

カメラの絞り羽根の役割

上の図のように、レンズを通った光は絞り羽根を通ることで光の量がコントロールされ、撮像素子(イメージセンサー)に当たります。

この絞り穴を大きくすることを絞りを開放すると呼び、逆に穴を小さくしていくことを絞り込む、と言います。穴を大きくすればたくさんの光が入ることになりますし、穴を小さくすると光の量が少なくなります。

絞り穴の大きさは任意に指定しない限り、私たちが普段オートモードなどで写真を撮る際は、カメラが周りの明るさに応じて自動的に絞り具合を調整してくれていますが、デジタル一眼レフカメラや高性能なコンデジなどでは、自分で任意の絞り値に調整することもできます。

カメラやレンズの絞り羽根の仕組み

上の図のように、複数の羽根を重ねることで穴の大きさを変えることができます。羽根を全く使用していない状態を開放といい、最大まで光を取り込むことができます。逆に絞り込むことで穴が小さくなり、光の入り具合を最小にすることもできます。この開き具合は後に解説するF値という単位で表され、絞りの開き具合(光の入る量)の指標として扱われます。

絞り羽根の構造

絞り羽根の構造

絞り羽根はそれぞれのレンズに搭載されていて(カメラ本体ではない)複数の羽根を組み合わせて光の通る量を調整できるようになっています。

絞り羽根の数はレンズによって異なりますが、おおむね6~9枚の羽根が組み合わされた構成になっているものが多く見られます。

絞った時の穴の形状が円形に近い状態になっているものを円形絞りといい、ボケ具合が美しくなります。以前は高級なレンズにこの円形絞りが採用されていましたが、近年では多くのレンズに採用されつつあります。

逆に円形にならない絞りのタイプを多角形絞りといいます。一部のエントリーモデルや価格帯の安いレンズ、昔のオールドレンズに採用されている絞り羽根の構造です。

なぜ絞り羽根が必要なのか?

「別に絞り羽根がなくてもいいじゃないか!」「どうして光の入る量を調整する必要があるの?」など、絞り羽根がなくてもいいように思いますが、なぜ絞り羽根が必要なのでしょう。絞り羽根が必要な理由をいくつか挙げてみました。

適正に露出させるため

例えば日中の明るい屋外で撮影したらとても眩しいですね。そんな状態で撮影したらイメージセンサーに光が入りすぎて写真が真っ白になってしまいます。そんなときは程よく絞って光の入る量を調整しなくてはいけません。光の量をうまくコントロールして適切な写真ができるのです。

人間の目でも同じことが言えます。まぶしい場所へ行けば瞳孔が閉じて目に入る光の量を少なくしますし、逆に暗い場所へ行けば瞳孔が開いてより多くの光を目に入れようとします。カメラもちょうどいい光の入り具合を調整する必要があり、その調整ができる絞り羽根は写真の出来栄えを決める大切な役割があります。

被写界深度のコントロール

何やら急に難しい言葉が出てきましたが、被写界深度のコントロールとは簡単に説明すると、ピントが合って見える範囲のコントロールができるということになります。

絞りを開くとピントが合って見える範囲が狭くなり、逆に絞り込むと範囲が広くなります。一眼レフ特有の「ボケ」の強い写真に仕上げる場合はできるだけ開放で撮影し、景色など全体的にピントが合ったシャープな写真に仕上げたい時は絞り込んで撮影したりします。

F値はレンズを通る光の量を数値化したもの

それではここから本題のF値についての解説に入りましょう。

絞り羽根はレンズの内部にあるため、穴の大きさが今どれくらいになっているのかを容易に外から確認することが難しく、条件を設定するにしても「大体これくらいの穴の大きさかな?」というようなアバウトなことでは正しい設定ができません。

そこで、今どれくらいの穴の大きさ(光が入る量)になっているのかをわかりやすく数値化したものがあり、それをF値と呼んでいます。

カメラのF値とはレンズを通る光の量を数値化したもの

F値 = レンズを通ってイメージセンサーに当たる光の量を数値化したもの

F値は数字が大きいほど光の通る穴は小さくなる

下の図はF値の特性を一覧表にしたものです。初心者が間違いやすいのが、F値の数値が大きいほど光の入る量が多くなると勘違いするケース。

F値の世界では全く逆であり、数字が大きいほど光の通る穴は小さくなり、光の入る量が少なくなります。

F値の特性

F値はレンズの焦点距離を有効口径で割った値のことを言います。この計算式や説明などはマニアックで難しいですし、特にに覚える必要はありません。数値が小さいほどたくさんの光を取り込めると覚えておけばOKです。

F値の数値が小さいほど絞り穴は解放されて大きくなり、F値の数値が大きいほど絞り穴が絞り込まれて光の通る穴は小さくなります。

F値の数値が小さいほど、たくさんの光を取り込める

F値が小さいほど背景がよくボケる

F値が小さい=たくさんの光を取り込めることは前述しましたが、これ以外にどのような現象がおきるのでしょうか。F値を小さくすることで、ピント合っていない部分がよくボケることが知られています。

F値が小さくなると被写界深度が浅くなり、より背景がボケやすい特徴を持っています。被写界深度については違うコーナーで詳しく解説します。

絞りを開放するとピントの合う範囲が狭くなるため、ピントが合っている被写体より奥や手前が容易にボケてくれます。主題を目立たせる目的やポートレート写真に向いた写真が撮りやすいメリットがあります。

F値の違いによるボケ方の違い

上の写真のように、F値がF1.4の場合はピントを合わせた被写体(人形)だけが浮き上がり、奥や手前がふわっとボケる写真になりますね。

F値を大きくするにつれてボケが弱くなり、F22まで上げるとフレーム全体がシャープに写るようになります。ごちゃごちゃしてしまい、何がメインなのかよくわからなりました。

F値を小さくするとメインの被写体だけを強調できるようになり、こだわった写真を撮ることができます。

F値が小さい = 背景や手前がよくボケる

F値が小さいほど速いシャッター速度で写真が撮れる

F値を変化させる意味は、他にもまだあります。

F値が小さいほど光の取り込める量が増えるため、短い時間で露光させることができます。つまり絞りを開放すれば速いシャッター速度で写真が撮れるため、手ぶれを防いだり、低いISO感度で高画質を保ったままの手持ち撮影が容易です。

考え方を変えれば、F値を大きくすれば光の量が少なくなるため、露光させるには長い時間が必要になります。あえてスローシャッターで撮影したりするなど、意図的にシャッター速度を遅くしたい場合にはF値を大きくすれば解決します。

F値によって同じレンズでも画質が変化する

F値による画質の変化

上の図は、F値による画質の変化をグラフ化したものです。多くのレンズは、F値を目一杯小さくした状態(開放F値)では画質が低下します。全体的な解像感が失われ、全体的に眠い写真(ふわっとしたような)になります。

私たち人間の目でも、見づらいときには目を細めてみると、くっきり見やすくなるのと同じで、F値を少しずつ小さくして、程よく絞ると解像感が高まり画質が向上します。レンズによっても異なりますが、F8前後が最も画質が高まるような設計になっていることが多いですね。

それよりもさらにF値を大きくすると、回折と呼ばれる現象が発生し、また画質が悪くなります。回折現象については説明すると難しいので、ここでは絞り込みすぎると画質が悪くなると覚えておいてください。

F値による画質の変化はレンズの性能によっても大きく変化するため、光学性能の高いレンズ(いわゆる高級レンズ)であれば開放F値にしても画質が低下しにくいものもありますし、最も画質が高くなるF値もレンズによって異なります。

F値の範囲はレンズによって異なる

F値の範囲はすべて同じではなく、レンズごとに異なります。さきほどの例としてF1.4~F22の間でお話をしてきましたが、レンズによってはこれよりも範囲が狭かったり、広かったりする場合もあります。

開放F値とは、絞りを最大まで開けた状態のことで、そのレンズの明るさを判断する指標の1つになります。開放F値が小さいレンズほど、たくさんの光を取り込むことができます。

開放F値 = そのレンズの明るさの限界値

焦点距離が固定の単焦点レンズでは、レンズの構造が単純であるため比較的開放F値の低いレンズが多く、レンズの構造が複雑なズームレンズは開放F値が高いレンズが多くなっています。

F値の範囲はレンズによって異なる

上の図は、代表的なレンズを3つのカテゴリに分けて表記したものです。

レンズAはある単焦点レンズのF値の範囲です。開放はF1.8で、最小絞りはF22です。単焦点レンズは比較的開放F値が小さいが多く、F1.2~F2.8くらいまでのものが出回っています。最小絞りはF22くらいのものが多く、F5.6~F8くらいで画質が向上します。

レンズBは、高級ズームレンズと呼ばれるもので、どの焦点域でも開放F値が変化しない、いわゆる通しレンズと言われています。ズームレンズはF2.8が開放F値の限界と言われており、最小絞りはF22くらいのものが多く出回っています。

レンズCは、廉価版のキットレンズに多いもので、広角側と望遠側で開放F値が異なる構造になっていて、最小絞り値も広角と望遠で異なります。特に望遠側では光を多く取り込むことが苦手なので、シャッター速度が遅くなりやすく、手ぶれのリスクが大きくなるデメリットがあります。

これだけの要素ではありませんが、一般的に開放F値が小さい(明るいレンズ)ほど値段の高いレンズ(性能の高いレンズ)となる傾向があるので、例えばズームレンズで開放F値がF2.8のレンズだと、明るい良いレンズだと言われています。

単焦点レンズは構造上明るいレンズにするのが得意であるため、一般的なものでも開放F値がF2やF1.8などが主流です。高性能なものになるとF1.2やF1.4などのレンズも発売されています。一部F1やF0.95など、驚異的な明るさのレンズも発売されていますが、実用的なものではありません。

一方絞り込むほう(F値が大きい)もレンズごとに限界があります、一般的にはF22からF38くらいです。

F値の増え方は一定ではない

F値は等間隔に並んでいるわけではなく、一定の法則に基づいた増え方をしています。カメラ側の絞り値の設定を見ても、F1.4⇒2⇒2.8⇒4⇒5.6⇒8⇒11⇒16⇒22と変化(1段ごとの場合)していき、その上昇値が一定ではなく、数値が大きくなればなるほど上昇する値も大きくなります。ですから数値が大きくなりすぎるから、急激に光の入る量が少なくなる… ということではありません。

F値の増え方

計算式はとても難しいので初心者が覚える必要はありませんが、このステップが1段となり、例えばF2.8からF2にF値を変更すると光の入る量は2倍になり、逆にF2.8からF4に変更すると光の入る量は1/2になります。

カメラのF値とは まとめ

  • F値はレンズを通る光の入る量を数値化したもの
  • F値が小さいほど光の入る量が多くなり、大きいほど少なくなる
  • F値を変えることで画質が変化するため、被写体に応じて調整すると楽しい
  • そのレンズの目一杯の低くできるF値のことを開放F値と呼ぶ
  • 開放F値と最大絞り値はレンズによって異なる
  • 開放F値はそのレンズの明るさの指標となる
  • F値の増え方は一定ではない

F値は絞り穴の大きさを数値化したもので、カメラの撮影条件を設定するうえでもとても大切な要素です。ここでは初心者向けの解説になるので、数値が小さいほど絞り穴が大きくなり、数値が大きいほど絞り穴が小さくなるということだけを覚えておきましょう。

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