カメラのシャッターには、物理的な幕でシャッターを開けるメカシャッターに加え、最近でイメージセンサーが直接シャッターの役目を果たす電子シャッターが搭載され始めています。ここではシャッター方式の違いやメリット、デメリットなどについてご紹介したいと思います。
メカシャッター
メカシャッターはレンズとイメージセンサーの間にあり、物理的な幕が開いたり閉じたりするシャッター方式です。一眼レフやミラーレス一眼カメラのメカシャッターのことは一般的にフォーカルプレーンシャッターと呼ばれています。
以前はカメラのシャッター=メカシャッターであり、デジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラ、コンパクトデジカメなど、多くのカメラには今もメカシャッターが搭載されています。
メカシャッターのメリット
- 電子シャッターと比べると動体歪みが発生しにくい
- フリッカー現象に強い
- 内蔵フラッシュや外部のストロボが使える
- 心地よいシャッター音で写真を撮っている感がある
電子シャッターと比べると動体歪みが発生しにくい
メカシャッターは非常に素早く幕を開いたり閉じたりすることができるため、電子シャッターに比べてローリングシャッター現象が小さいので、動体歪みが発生しにくいです。このため高速で動く被写体に対して有効です。
フリッカー現象に強い
以前はメカシャッターもフリッカー現象には弱かったんですが、フリッカーレス撮影機能がほぼ標準装備されてからは、蛍光灯下でも色むらを抑えて綺麗に露出できるようになりました。ただし、近年のミラーレス一眼ではフリッカーレス機能を備えた電子シャッターも登場し始めているため、優位性は少しずつなくなってきています。
内蔵フラッシュやストロボが使える
内蔵フラッシュやストロボが当たり前のように使えるのはメカシャッターのみで、電子シャッターでは使えません。フラッシュ撮影をするときはメカシャッターを選択しましょう。
心地よいシャッター音で写真を撮っている感がある
一眼系をやっていると、撮影しているときのカシャカシャ音が心地よいと感じる人も多いはず、メカシャッターでは大いにその音を堪能できるので、撮影するモチベーションが上がります。って私だけでしょうか・・・
メカシャッターのデメリット
- 大きなシャッター音がする
- 低速度撮影時にシャッターブレ、シャッターショックが起きる
- シャッターは消耗品で可動部の故障、耐久性の問題がある
- 連写速度が電子シャッターに比べて遅い
大きなシャッター音・低速度撮影時にシャッターブレ、シャッターショックが起きる
これは機械式のシャッターを使っているので仕方ありませんが、大型のセンサーであればあるほどメカシャッターの「カシャ」音がはっきりと聞こえます。サイレント撮影に設定することで、ある程度音を抑えることができるものの、電子シャッターのように完全にシャッター音を消すことはできません。
またメカシャッターは物理的にシャッターであるため、開閉時にはある程度振動します。この振動がイメージセンサーに影響が出ることがあり、特に1/100~0.5秒くらいのシャッター速度のとき、シャッターブレ、シャッターショックとしてぶれることがあります。
シャッターは消耗品で可動部の故障、耐久性の問題がある
シャッターは消耗品であり、何万回か開閉することで寿命を迎えます。入門機ほど寿命が短く5万回ほど、中級機から上位機は15万~50万回と言われています。これも個体差が大きく、寿命を超えてもなかなか壊れないこともあれば、目安の枚数に到達せずとも調子がわるくなることもあります。
カメラは車の総走行距離数と同じく、買ってから今まで何回シャッターを切ったかが記録されています。通常では何枚撮影したか確認はできませんが、フリーソフトやWEBサービスで簡単に調べることができます。
連写速度が電子シャッターに比べて遅い
近年ではメカシャッターの性能も高まり、連写性能はかなり上がりました。特に報道用のプロカメラになると、1秒間に16~20コマの撮影が可能で、これでもまばたきするほどの速度ですが、電子シャッターでは1秒間に30コマを超える連写で、電子シャッターにはかないません。
メカシャッターが適したシーン
メカシャッターは電子シャッターに比べると動体歪みが少ないため、動きの激しいスポーツや運動会、レースや鉄道写真などにも向いています。また、普段のスナップやポートレートなど、動作音が気にならないシーンでも問題なく使えます。
電子シャッター
電子シャッターは露光に物理的な幕がない、または幕を使わないシャッター方式で、イメージセンサーが電子的に直接読み込みを行うことでシャッターの代わりになる露光方法です。スマートフォンや一部のコンパクトデジカメに採用されていましたが、近年ではミラーレス一眼カメラにも搭載されるようになってきました。
電子シャッターのメリット
- 高速連写ができる
- シャッター音がない
- 物理的な可動部がないので故障や寿命がない
- シャッターブレやシャッターショックがない
高速連写ができ、シャッター音がない
電子シャッターには物理的な幕がないため高速連写ができます。エントリー向けの入門機でも1秒間に10コマ以上の高速連写が可能で、被写体の一瞬の表情も逃がしません。また電子シャッターはイメージセンサーで直接光を読み込むため、全く音がしません。回りに音を配慮しなければならないシーンなどの撮影にとても相性がよいです。
物理的な可動部がないので故障や寿命がなく、シャッターブレもない
メカシャッターのように物理的に動くところがないので、シャッターの寿命は存在しません。枚数を気にせず撮影できるところは大きいです。ただ、イメージセンサーや他の基盤などほかの部品もたくさんあるので、永久に使えるわけではありません。またシャッター自体が振動しないため、シャッターブレやショックもないので、安心して低速度の撮影も行えます。
電子シャッターのデメリット
- 動いているものが歪む(ローリングシャッター現象)
- フリッカー現象が起きやすい(入門機のみ)
- ストロボが使用できないなどカメラの機能が制限される(上位機を除く)
- シャッター音がないので撮影している感覚が薄れる
動いているものが歪む(上位機を除く)
電子シャッターのデメリットとして大きいのが、激しく動いているものが歪んでしまう「ローリングシャッター現象」が起きることです。これは電子シャッターはイメージセンサーの上から順番に露光を行うため、上と下では読み込みのタイムラグが発生しまうのが原因です。
そのため電車の通過やモータースポーツ、運動会など動きの激しい被写体を撮影すると画像が歪んで記録されるため、特に横に移動するスポーツ撮影や激しく動くものの撮影には向きません。(フラッグシップ機など上位機を除く)
上の2つ写真はシャッター速度1/2500、F4、ISO800という全く同条件で撮影しました。列車の速度は約90キロくらいでしょうか。1つは電子シャッターで撮影し、もう一つはメカシャッターで撮影しました。
電子シャッターで撮影した方は電車が斜めに歪んでいるのが一目瞭然だと思います。
たま~に「電子シャッターはすごい連写できるんだよね~」と、ドヤ顔で運動会やスポーツ撮影をしている人を見かけますが、入門機でやってしまうと後で絶対後悔することになるので、激しく動くものを撮るときはメカシャッターを選びましょう。
フリッカー現象が起きやすい(入門機のみ)
フリッカー現象とは蛍光灯下やLED案内板など、一定の周期で点滅を繰り返す光や状況下において、色むらなどが写真に現れる現象です。カメラにはフリッカーレス機能がついているものがありますが、電子シャッターにはその機能が使えません。蛍光灯下での撮影や、電光掲示板などの撮影にはメカシャッターを選択しましょう。
ただし、近年発売されている中級機以上の上位機種は、電子シャッターでもフリッカーレス撮影ができるものも登場し始めていますので、今後このデメリットは解消されていく見込みです。
ストロボが使用できないなどカメラの機能が制限される(上位機を除く)
電子シャッターはシンクロ撮影が苦手であるため、ストロボや内蔵フラッシュが使用できません。
シャッター音がないので撮影している感覚が薄れる
特に今まで一眼系を使っている人にとっては、シャッターボタンを押すことで「カシャ」というフィーリングが心地いいと思う人もいると思います。電子シャッターはほとんど音がしないので、カメラで撮っているという感覚が薄れてしまい、何か物足りなさを感じてしまうのは私だけでしょうか・・・
電子シャッターが適したシーン
電子シャッターのメリットは高速連写とサイレント撮影ができることなので、最も向いているシーンは静かに撮影する発表会や劇場、会議などの様子を撮影するシーンに向いています。
またタイムラプス撮影など、短時間で撮影枚数が増えるものは、メカシャッターの寿命を温存するためにも電子シャッターがおすすめです。
電子先幕シャッターって何?
近年登場してきている電子先幕(でんしさきまく)シャッター、皆さんはお分かりでしょうか。電子先幕シャッターは、メカシャッターと電子シャッターのよいところを合わせたハイブリッド的なシャッター方式です。
メカシャッターは、先幕と後幕に分かれており、シャッターを押すと先幕が最初に開き、後幕で閉じるという二重構造になっています。
一方電子先幕シャッターは、先幕の部分だけイメージセンサーで電子的にシャッターを開け、閉じるときだけメカシャッターの後幕を使う方式です。
電子先幕シャッターのメリットとデメリット
- フラッシュ・ストロボの同調撮影が可能
- メカシャッターよりも連写性能が上がる
- シャッターブレやシャッターショックの影響が少ない
- メカシャッターと同様、動体歪みが少ない
- ミラーレス一眼ではレリーズタイムラグが少ない
- シャッター音はメカシャッターと同じくらいする
- 明るい大口径レンズを使うと、高速シャッター時にボケ欠けが起きる
- 後幕はメカで動かすため、シャッター自体は消耗する
近年のミラーレス一眼にはほとんど搭載されている電子先幕シャッターで、特に設定を変えていない限りはデフォルトでこの設定になっていることが多い方式です。
メリット面は非常に大きく、メカシャッター由来の連写性能の低下やシャッター動作時によるブレなどが軽減され、電子シャッターの欠点である動体歪みも少なく、ストロボも使えるという良いところ取りのシャッター方式ですね。
デメリット面は、シャッター音とメカシャッターの摩耗くらいで、めぼしい短所は見つけられません。明るい大口径レンズで超高速シャッターを使うと、点光源の玉ボケが欠ける現象がありますが、夜景で超高速シャッターを使うシーンはほとんどなく、日中の撮影ではほとんど気にならないため、よほど神経質な人以外は無視して大丈夫です。
近年では電子シャッターの高性能化が進んでいる
私の推測ですが、近い将来物理的なシャッターはなくなるのではないかと思っています。電子シャッターのデメリットとしては、動いているものが歪むローリングシャッター現象や、フリッカー現象、ストロボ同調ができないなどが挙げられていましたが、これらの克服も時間の問題ではないでしょうか。
実際に、近年発売されている上位機はローリングシャッター現象をかなり抑えたカメラが登場していきていますし、ストロボ同調ができるものも登場してきています。
まだまだ高価なカメラのみの機能となっていますが、これが入門機まで浸透してくるなら、メカシャッターは淘汰されていくのではないでしょうか。
しかしあの「カシャ!」という心地いい音が「写真を撮っている」という感じがあるので、将来的にこの音がなくなるのは残念だなと思ってしまうのは私だけでしょうか。
メカシャッターと電子シャッターの違い まとめ
- カメラのシャッターにはメカシャッターと電子シャッターがある
- メカシャッターはフォーカルプレーンシャッターと呼ばれ、従来の一眼レフやミラーレス一眼に採用
- 電子シャッターはスマートフォン等で活躍してきたが、近年一眼系カメラにも搭載し始めている
- メカシャッターと電子シャッターにはそれぞれ特徴・メリット・デメリットがある
- 撮影するシーンでシャッター種類を使い分けるとよい
- 近年のミラーレス一眼には、電子先幕シャッターと呼ばれる新方式も使われている
- 電子シャッターの高性能化が進んでおり、将来は電子シャッター一択になる可能性も
私たちが何気なく撮影しているシャッターですが、シャッターの種類を把握することで、上手に使い分けることができるようになります。上記を参考にしながらシャッター方式の知識を深めてみてください。