夏の夜空を彩る花火、一瞬で終わってしまうその美しい花を写真におさめたい人もたくさんいるかと思います。流れる花火の撮影は一見難しそうに見えますが、コツとタイミングを合わせれば誰でも簡単に撮ることができます。
ここでは初心者でも上手に花火を撮影する方法をご紹介いたします。
花火の撮影には三脚とレリーズが必須
花火はスローシャッターが基本になるため、手持ち撮影ではブレブレになってしまいます。ですからカメラを固定する三脚が必要になります。また、カメラに触れることなくタイミングよくシャッターが切れるレリーズも必要ですので、この2つは準備しておきましょう。レリーズについてはこちらでも詳しく紹介しています。
花火の撮影は、任意の時間だけシャッターを開けることができるバルブモードという撮影モードを使います。バルブモードがある一眼レフカメラ・ミラーレス一眼カメラであれば問題ありませんが、コンパクトデジカメを使う場合はマニュアル撮影モードや花火撮影モードができるものを用意しましょう。そのほか、懐中電灯や折りたたみの腰かけ、虫よけなどがあると便利です。
花火の撮影に適したレンズは
花火にはさまざまな大きさ、高さのものがあります。周りの景色を含めて花火全体を撮影するのであれば広角レンズ、一部を切り取るような表現をする場合は標準から中望遠レンズがおすすめです。
単焦点レンズの場合は、一度ピントを合わせれば再度合わせる必要がないので便利ですが、画角が変えられないため、花火がフレームに入りきらなかったり、逆に小さくなってしまう欠点があります。
ズームレンズの場合は画角が変えられるので、一発物やスターマインなど、花火の規模や大きさによって可変できますが、その都度ピントを合わせないさなければいけない手間があります。
花火写真の良し悪しを決めるのが場所どり
花火の撮影で大変なのが場所取りや場所選びです。単に花火だけを楽しむのであれば、打ち上げ会場に近ければ近いほど迫力があっていいですが、カメラで撮影する場合はやたら近ければいいというワケでもありません。
真っ暗な夜空に花火だけを写すと単調な写真に仕上がり気味になるので、夜景など周りの風景を一緒に写すと味のある写真になります。また尺玉など大きい花火は、会場に近すぎると超広角レンズを使わないとファインダーに入りきらないこともあるので、個人的にはあまり会場から近すぎる場所はおすすめできません。また当日の風をチェックして、風上に移動することも大切です。
花火会場に近い場所はそれなりに人も多く、じっくり三脚を広げて撮影するのも難しいですね。通行人や見物客に三脚をひっかけられたりなどトラブルになることも多いので、できるだけ人ごみを避けてゆっくり撮影したいものです。
花火会場など全体が見渡せる少し高台などは撮影には絶好のポイントです。明るいうちに絶好のポイントがないかチェックしておくのもいいですね。
このほか、人気の撮影スポットなどでは場所取り合戦になっていることもあります。花火開始時間ギリギリに到着しても、既にいい場所は三脚で埋め尽くされていた・・・という話もよく聞きますので、人気のスポットであればあるほど早めに行って場所取りをしておくことも考えましょう。
花火の撮影前の設定
花火を撮るための撮影条件として重要なことは2つです。1つはピントの固定(置きピン)、もう1つは自由なタイミングでシャッターを切ることです。ピントの固定はフォーカスモードをマニュアルフォーカスに。シャッターは自由に切ることができるバルブモードを選択しましょう。
バルブモードがないカメラの場合は、マニュアル撮影モードにしておきます。
F値は花火の明るさや規模によって変化させる必要があるため、リアルタイムに変えられるように練習しておきましょう。
ISO感度は基準感度(ISO100程度)にしておき、ホワイトバランスは任意で構いません。ピクチャースタイルは色が鮮やかに出る「風景」などがおすすめです。
現場に到着したら三脚にカメラをセットし、花火が上がる方向にレンズを向け、レリーズ等をセットしましょう。
ピント合わせの方法は2つ、入念にしておこう
花火を上手に撮影するポイントとして、「ピントをしっかり合わせること」が大切。しかし日中の撮影とは違い夜空は真っ暗なため、ピントを合わせるにはコツが必要です。ここではピントを合わせる2種類の方法をご紹介します。
置きピンによるピントの固定
置きピンはあらかじめピントの位置を固定しておく方法です。星空や鉄道の撮影をしている人ならお馴染みの方法ですが、遠くの明かりや目印になるものをターゲットにして、ピントを細かく合わせ、MF(マニュアルフォーカス)にしてピントを固定してしまいます。花火が上がってもシャッターボタンを押すだけなので、1発目から撮影に専念できます。
ライブビュー撮影で拡大表示し、遠くの街灯や明かりを基準にピントリングを回して合わしましょう。
一度ピントが合えば、カメラやレンズに大きく触れることがない限りピントがずれることはありません。場所を変えたり、電源を入れなおしたり、レンズを付け替えたりしたときは、仕上がりのチェックを行いましょう。
一発目に上がる花火でピントを合わせる
最初に上がる花火をターゲットにAF(オートフォーカス)でピントを合わせ、その後MF(マニュアルフォーカス)に切り替えて撮影する方法です。置きピンに比べて手軽であり、焦点距離が変わるズームレンズでの撮影におすすめです。
一発物よりもスターマインのほうがピントが合いやすいので、最初に上がってくる花火は撮影ではなくピントを合わせるための照準として考えるとよいでしょう。
デジタル一眼レフカメラの場合は、測距エリアを自動選択にしておくと、AF枠に花火がかかればピントが合います。
ミラーレス一眼カメラなどでライブビュー撮影をする場合は、AFモードを「1点」ではなく「多点」「広範囲」を選んで花火を捉えやすくするとよいでしょう。
実際に花火を撮影してみましょう
設定とピント合わせが終わったら、いよいよ花火を撮影していきます。花火には単発とスターマインの2つに大きくカテゴリ分けされます。
単発の花火の場合
単発花火(一発物)の場合は、打ちあがった瞬間にレリーズのボタンを押し込み、そのまま押し続けてキープします。その後上空で花火が開き、花が完全に消えてからレリーズボタンを離します。バルブモードの場合はボタンを押している間だけシャッターが開くことができるので、任意のタイミングで撮影することができます。
バルブモードができないカメラであれば、マニュアル撮影モードにしておき、打ちあがりから花が開き終えるまでの時間をざっと測っておき、その時間+3~5秒くらいを目安にシャッタースピードを調整しましょう。
F値は最初はF8くらいで調整します。一発目で構図などをチェックし、フレーム位置やバランスなどもチェックしましょう。構図を変えるだけなら問題ありませんが、焦点距離を変える場合はピントもずれてしまいますので、必ず合わせ直しましょう。
一発物の花火は昇りと呼ばれる尾がつくものがあります、水平に注意しながら縦構図で尾と一緒に撮るとよいでしょう。
撮影が終わったらすぐに再生してみて、露出状態を確認しましょう。中心部が真っ白になっているのは明るすぎるので、F値をもう少し上げて(絞り込んで)撮影してみるといいでしょう。花火は種類によって明るさが異なります。素早くF値が切り替えられるようにしておきましょう。
上の写真のように露出がオーバーすると花の中心部が真っ白になります。露出がアンダーになると色がわかりにくくなります。ちょうどいいのは中心部まで色の階調が識別できるくらいの仕上がりがベストとなります。
しかし先ほども申し上げた通り、花火は種類によって明るさが異なるため、すべての花火をベストな状態で撮影するのは難しいと言えます。
スターマイン・連発花火の場合
スターマインなどの連発花火の場合は、夜空が非常に明るく賑やかになります。単発花火と同じ条件にしてしまうと露光オーバーになってしまうので、F値をさらに絞り込んで(F14~F22)撮影します。
スターマインは花火が途切れるタイミングがないため、一発物のように長く露光させる必要はなく、数秒適度に区切りながらタイミングよくシャッターボタンを長押しして露光させます。
打上開始から終わりまでシャッターボタンを開けっぱなしにすると真っ白になるので注意してください。
上の写真はスターマインの失敗例です。明るすぎて白飛びしてしまっています。「銀冠菊」(ぎんかむろぎく)と呼ばれる白っぽい色の花火は光量が強いため、F値を相当絞り込まないとすぐに露出オーバーになってしまいます。写真はF11・SS1秒・ISO100で撮影しましたが、F値を20くらいまで絞り込まないといけなかったかもしれません。
スターマインの場合は運的要素も必要ですから、深く考えずにとにかくシャッターを切り続けましょう。何百枚と撮影しても「あっ、いい感じ」と思うものは数枚しかない… ということもあります。
スターマインの場合は横長に広がるものが多いので、縦構図にしてスクエアサイズ(インスタグラムなどにおすすめ)にトリミングするか、構図を横にして撮影するとよいでしょう。
平凡な花火写真にしないように
基本の撮影に慣れたら、ちょっと違う構図で撮ってみたり、変わった撮影方法にもチャレンジしてみましょう。
花火だけでなく周りの風景を入れる
花火は周りの景色と入れることで臨場感豊かな写真になります。風景など全体を入れて撮影してみましょう。また人が多い場所で撮影するときは、あえて見物客も入れてしまうことで、花火大会の雰囲気が出ます。
花火だけでなく、周辺の道路や橋も入れて撮ると、臨場感が出て雰囲気がよくなります。
こちらは花火会場から10キロ以上離れた山の上から撮影、混雑した会場を離れて周りの景色と花火を入れるのもいいですね。
大胆に人工物と一緒に入れてしまうのもあり。単なる花火だけではなく、周りの物を取り込んで作品にしてしまいましょう。
アップで撮影する
花火を撮ろうとすると、どうしてもフレームの中に花火を収めようとしがちですが、花火は必ず大輪をフレームの中に入れなければならないというルールはありません、あえてフレームからはみ出る写真を撮ることで、大きさの迫力を表現することもできます。
撮影した後でも「どうも迫力に欠ける」と思った場合は、思い切ってトリミングしてみるのもいいでしょう。平凡な写真が化けるかもしれません。
中望遠レンズを使えば、迫力ある花火のアップ写真を撮ることも可能です。
彩色千輪菊など一瞬で終わる花火ですが、フレームいっぱいで撮影できれば迫力満点です。
花が開いているときにピントリングを回す
本来花火を撮影するときはピントを固定するものですが、一眼カメラの場合はピントがずれると美しい玉ボケになるため、花が開いた瞬間にピントリングをタイミングよく回せば、下のような写真になります。
ピントをずらしてシャッターボタンを押し、花が終わるにつれてピントを合わせていくと、外側ほど光源が点になってダリアの花のようになります。普通の撮影に飽きたらこんな写真にもチャレンジしてみてください。
花火の撮影方法・撮り方のコツ まとめ
- 花火を美しく撮影するなら三脚とレリーズを準備する
- 撮影モードはバルブ(B)かマニュアル撮影で行う
- ISO感度は固定してF値を変化させて明るさを調整
- ピントは基本的に固定して撮影する
- 慣れてきたら変化をつけて撮影しても面白い
花火の撮影はポイントさえ押さえておけば誰でも簡単に撮影することができます。ピント合わせとF値の使い方さえマスターしておけば、あとはタイミングよくシャッターをきるだけです。この夏は花火を見るだけでなく、是非記録に収めてみてはいかがでしょうか。