みなさんはPLフィルター・偏光フィルターを知っていますか? 特に日中の風景撮影では重宝するアイテムですが、偏光フィルターの使い方や特徴をよく分かっていない人も多いようです。ここではPLフィルターの役割や効果、使い方のほか、おすすめフィルターをご紹介していきましょう。
PL(偏光)フィルターの特徴
偏光フィルターはPLフィルターとも呼ばれており、不要な光の反射を防ぐことができるため、色が鮮やかになったり、見えないものが写りやすくなります。たとえば美しい新緑や紅葉の景色を撮りたいと思っていても、日の光が当たってしまうと全体的に白っぽくなってしまったり、色があせて見えてしまいます。
光の余計な反射を取り除き、本来の美しさが際立つ
偏光フィルターを装着すれば余計な反射を除去することができるため、被写体そのものの鮮やか色をそのまま写真として捉えることができるようになります。

上の写真は美しい紅葉したモミジの写真ですが、これは何も装着せずにそのまま撮影しました。赤くなっているのは分かりますが、日の光が葉に当たって白っぽくなっています。

次に偏光フィルターを取り付けて、効果を半分くらいにして撮影してみました。かなり光の反射が抑えられて、紅葉本来の鮮やかさが分かるようになってきました。

最後に偏光の効果を目一杯にして撮影。ほとんど光の反射がなくなり、紅葉がとても鮮やかに写っています。
この3つの写真はレタッチソフトで編集しているわけでなく、偏光フィルターの効果だけでこれだけの差が現れます。特に順光や斜めから光が当たっているような環境では、大きく効果を発揮します。
水面反射を取り除く
また、偏光フィルターは水面反射の光も除去できます。釣りなどをしている人は、水面の様子がよく見えるように偏光眼鏡や偏光グラスを装着している人もいると思いますが、偏光フィルターを装着して水面を撮影すると、水面の反射を取り除くことができるようになります。

上の写真は偏光フィルターを装着せず、そのまま撮影したものです。見ての通り水面が激しく反射しているため、中の様子を捉えることはできません。

次に偏光フィルターを装着して撮影。余計な水面反射がなくなっているので、中で鯉が泳いでいるのがよく分かります。
このように偏光フィルターをうまく使うことで、余計な水面反射の光を取り除くことができます。
空や遠くの景色をより鮮やかにする

上の写真は何も装着せずに景色を撮影しました。それなりに空は青く、山並みも鮮明に写っているのがよくわかります。

次にこの写真は偏光フィルターを装着して撮影。山並みなど全体的により鮮明で濃くなり、空の青さもより濃くなっていると思います。こちらもレタッチソフトなどは使用せず、撮って出しそのままの写真です。
このように偏光フィルターは、余計な光の反射を除去して鮮やかに写してくれる効果や、ガラスや水面の反射を取り除く効果がありますので、日中屋外での風景撮影にとても重宝するアイテムです。
偏光フィルターの構造と取り付け方
偏光フィルター(PLフィルター)は、2枚のガラス板で構成されており、ガラス板の間には偏光膜と呼ばれるものが装着されています。このガラス板を回転させることで反射光除去の強さを可変させることができるため、前側の枠は360度回せるようになっています。

それでは、偏光フィルターを交換レンズに取り付けましょう。

レンズに偏光フィルターを取り付けるときは、固定用の枠を部分をしっかり持って固定します。固定用の枠はフィルターの後ろ側にあり、少し飛び出しています。前側の枠はぐるぐる回ってしまいますので、手前側の枠を持ってしっかりと固定しましょう。

上は偏光フィルターを取り付けた写真。薄いサングラスのようになっています。
偏光度合いを調整するリングは360度回すことができます。回転リングはフリーになっているのでどれだけ回しても外れたり締まったりすることはありません。光の方向や角度で常にコンディションが変わるため、撮影する度にこのリングを回して除去の強さを調整しながら撮影するのが基本です。
偏光フィルターを装着しての撮影方法
偏光フィルターを装着した状態でも、基本的な撮影方法は普段と変わりません。まずファインダーや液晶画面を見ながらだいたいの構図を決めて、一度ピントを合わせます。
ピント合わせが終わったら、ファインダーや液晶画面を見ながら偏光フィルターの回転リングを回してみましょう。必ず回転リングを回して、光の当たり具合を確かめてください。何も回さないと効果が出ない時があります。
特に効果を目視で確認できるのは、日の光が当たって白く反射している木の葉などです。また車のガラスや家の窓ガラスなども効果が分かります。ファインダーを見ながらリングを回すと、スッと余分な光が消えるところが現れると思いますので、自分好みのところでリングを止めましょう。

偏光リングは回せば回すほど偏光効果が強くなるということではなく、90°回すごとに効果が入れ替わります。
例えば0°のところで除去効果が最も少なかった場合、そこから90°回したところで除去効果が最大になります。つまり効果が最小と最大の間は90°なので、90°以上回してもそれ以降効果は強くなりませんし、逆にピークを超えると除去効果は弱まります。どんどん回しても偏光効果が強くなったり弱くなったりを繰り返すだけなので、回す角度は180度以内にし、よい場所を探してみてください。
太陽を背に向けて撮影したほうが偏光効果が高く、逆光になるとあまり効果が出ません。また曇り空など太陽光が出ていないときも偏光効果が低くなります。

水面やガラス面などの平らなものの反射を除去したい場合は、面に対して30~40°の角度にカメラを向け、偏光リングを回してみましょう。反射の除去効果がとても強くなります。
偏光度合いを調整できたら、もう一度しっかりと構図と決めてピントを合わせて撮影します。
偏光具合はカメラの向きや光の当たり方によって変わります。一度偏光具合を調整したとしても、被写体やカメラの向きを変えてしまうと、その都度偏光具合を調整する必要があるので注意しましょう。
偏光フィルターを使う際の注意点
シャッター速度が遅くなる
偏光フィルターそのものを見ればわかると思いますが、フィルターはサングラスのように暗くなっています。つまり光の入る量は何も装着しないときより少なくなるため、シャッター速度が遅くなります。
状況や偏光度合いによっても変化しますが、1~2段程度シャッター速度が遅くなるため、手ぶれには注意しましょう。(価格の高価なフィルターほど通過率が高いため、シャッター速度の低下を抑えることができます)
条件によってISO感度を高くしたり、絞りを開放したり、三脚を使うなど対策をしてください。
反射の取りすぎに注意
条件によっては劇的に光の反射がなくなるため、面白がって何でもかんでも効果MAXで反射を取り除いてしまいがちです。ある程度光の反射も入れないと、艶感がなくなり、のっぺりとした奥行きのない作品になりがちです。不自然にならないように偏光具合を調整しながら撮影するのがポイントです。
条件によっては反射が取れない場合もある
光の反射を取り除くには、光が当たっている面に対して40度くらいの角度になっていることが条件です。それ以外の角度では、すべての反射を除去できないため、カメラの向きや角度によっては反射がうまく除去できない場合もあります。
特に反射が真正面を向いている場合や、水平に近いような極端な角度になるとほとんど反射が取れませんので、撮影する角度に注意しましょう。
偏光フィルターは消耗品
偏光膜は経年劣化しやすく、特に紫外線の影響をよく受けます。使う頻度や保管している環境によって変わりますが、一般的には7~8年で寿命を迎えると言われています。
買ったばかりの偏光フィルターは灰色をしていますが、劣化した偏光フィルターは黄ばんでいるので、一度白い紙の上に置いて色を確かめてみるとよいでしょう。普段の保管は直射日光が当たらない暗い場所で保管し、高温多湿を避けるようにしてください。
レンズフードはどうする?
偏光フィルターは常に偏光リングを回しながら撮影することになりますが、そこで邪魔になってくるのがレンズフードの存在。広角レンズではそれほど苦になりませんが、奥行きのある望遠レンズの場合はフードが邪魔で思うようにリングを回すことができません。
上手な人はうまくフードの中に手を入れてリングを回している人もいますが、初心者の方はうっかりフィルター表面を触ってしまって指紋だらけにしてしまう恐れもあるので、自信がなければレンズフードは外して使いましょう。
偏光フィルターの選び方
最後に偏光フィルターの選び方についてご案内しましょう。偏光フィルターでも、性能によって価格がかなり変わってきますし、一般的なプロテクターに比べると若干高価ですから失敗しないように選びたいものですね。
円偏光フィルターを選ぶ
実は偏光フィルターには大きく2種類あり、PLフィルター(偏光フィルター)と、C-PLフィルター(円偏光フィルター)に分かれています。どちらもフィルターの効果としては変わりませんが、デジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼にはC-PLフィルター(円偏光フィルター)を選んでください。
安価なPLフィルターはAF(オートフォーカス)を内臓していないタイプで、ハーフミラーがない昔のカメラ用なので、使うとピント合わせが正しく行えなかったりと誤作動を起こします。
※サーキュラーPLとC-PLは同じ意味です。
偏光フィルターの価格の違いは?
価格はフィルターの直径が大きいほど高価になりますが、同じ大きさでもメーカーやシリーズによって価格が異なります。安いものは数千円で購入できるものもあれば、1万円を超えてくる商品までさまざまです。価格が高いものほど画質の低下や明るさの低下が少ないものであったり、枠が薄くて干渉しにくいなどのメリットがあります。
レンズの径に合ったフィルターを選ぶ
これは偏光フィルターだけではなく、すべてのフィルターに言えることですが、カメラのレンズ口径に合ったサイズのフィルターを選びましょう。レンズが2本、3本と増えてくるとそれに合ったサイズのフィルターを買い足す必要があります。
管理人おすすめの偏光フィルター
偏光フィルターは各メーカーからさまざまなものが発売されていますが、特にこだわりがなければ「Kenko」一択で問題ないと思います。Kenkoはレンズ用フィルターとしては定評があり、偏光フィルターをはじめ、一般的なプロテクターや減光フィルターなども人気です。価格別におすすめの偏光フィルターをご紹介させていただきます。
(ここでは初心者向けのレンズに多い58mm径のものをご紹介しますが、実際に買う場合はレンズに合った直径のものを購入ください)
Kenkoから発売されているPRO1D ワイドバンドサーキュラーは、普段使いの定番おすすめ偏光フィルターです。筆者も愛用しており、価格と性能のコストパフォーマンスが高いフィルターです。迷っているようならぜひこちらを使ってみてください。
PZeta Quintは強化ガラスとジュラルミン枠を使用した耐衝撃仕様の偏光フィルターで、ホコリや水滴などの付着についても簡単に落とすことができる高性能フィルターです。滝や山登りなど過酷な環境での使用に適しているほか、ぶつけてもキズが付きにくいため初心者の方でも安心です。少し価格は高めですが、安心して使える逸品です。
Kenkoの偏光フィルターの中では最高級のグレードのものです。価格は安いタイプの数倍しますが、暗くなりにくい高通過型の偏光膜を採用しているほか、新しい固定方式を採用しているため歪みが少なくレンズの解像度を損なわない仕組みや、0.3%以下の低反射率、撥水撥油コーディングの採用など、干渉を最小限に抑える機能が備わっています。
偏光フィルター(PLフィルター)の特徴と使い方 まとめ
- 偏光フィルターは被写体に当たっている光の反射を除去するフィルター
- 光りが除去できると被写体本来の色が鮮やかに表現できるため、風景写真に向く
- 水面やガラス面の反射のほか、空なども鮮やかに写すことができる
- 偏光フィルターは2枚のガラス板を回転させることで偏光度合いを調整する
- メリットだけでなく、注意点もあるので撮影時にはポイントを押さえておく
- 初心者向けの手ごろなものから、プロ仕様の高いものまで価格はさまざま
屋外の風景撮影には必須と言ってよいほど偏光フィルターの恩恵は大きいです。近頃ではアプリやソフトで光の反射を除去できるようなものもありますが、美しい風景写真を撮るなら1つは持っておきたいところです。上記を参考に偏光フィルターについて理解していただき、是非活用してみてください。