みなさんはカメラの交換レンズの中に「明るいレンズ」と呼ばれるものがあるのをご存知でしょうか。「レンズ自体が発光するわけでもないのに、レンズに明るいも暗いもないだろう」と思われがちですが、実際に明るいレンズとはどのようなレンズを言うのでしょうか。ここではレンズの明るさについての解説や、明るいレンズ・暗いレンズについてご紹介したいと思います。
明るいレンズとは開放F値の小さいレンズのこと
「このレンズは比較的明るいから」とか「これくらい明るいレンズをを使えば・・」など、レンズの性能や指標を意味する言葉として「レンズの明るさ」というものが使われます。
絞り穴の大きさを数値化したものをF値と呼び、F値が小さいほど絞り穴は大きくなるため、たくさんの光を取り込むことができます。
カメラの交換レンズは、どれだけの光を取り込むことができるかの限界があり、そのレンズで目一杯光を取り込むことができる状態のことを開放F値と呼びます。開放F値が小さいほど多くの光を取り込むことができます。

レンズによって開放F値は違うため、たくさん光を通すことができるレンズもあれば、そうでないレンズもある。
明るいレンズの一般的な定義は
レンズ構成が単純な単焦点レンズでは開放F値を容易に小さくできるため、一般的にはF2.0未満の短焦点レンズのことを明るいレンズと呼び、構造が複雑なズームレンズではF2.8のレンズを明るいレンズと呼んでいます。
それ以外のレンズはすべて暗いレンズという仲間になります。
カメラと一緒にセットで購入するキットのズームレンズや、安価で購入できる単焦点パンケーキレンズは、明るいレンズからは外れていることが多いので、暗いレンズにカテゴリ分けされます。
明るいレンズのメリット
それでは明るいレンズを使用することで、どのような恩恵やメリットがあるのでしょうか。
明るいレンズは暗い場所で高速シャッターが使える
明るいレンズの大きなメリットの1つとして、暗い場所での手持ち撮影に有利ということが挙げられます。
例えば暗い場所で手持ち撮影をすると手ぶれをしてしまいますし、ISO感度の上げすぎは画質が低下してしまいます。明るいレンズはより多くの光を取り込むことができますので、暗い場所での高速シャッターの自由度が上がります。光源がとても暗いホタルや星空の撮影なども明るいレンズが威力を発揮します。

明るいレンズは背景がきれいにボケる
明るいレンズは絞りを開放し、F値を小さくすることで被写界深度が浅くなり、手前や背景がよくボケるようになります。明るいレンズを使うことで背景を綺麗にぼかすなど、被写界深度のコントロールが容易です。

上の写真のように明るいレンズを使ってISO感度を上げれば、ろうそくの火のような暗い場所でも手持ち撮影が可能です。絞りも目いっぱい開放していますので、奥と手前がしっかりボケています。
明るいレンズは1~2段絞ることで画質力アップ
明るいレンズはもともとのF値が小さいため、1~2段絞り込んでもキットレンズの開放F値と同等の明るさを維持できます。どんなレンズでも開放で撮影するより、いくらか絞り込むほうが画質が向上するため、実用範囲の明るさを維持しながら高画質な撮影も可能です。

明るいレンズは特に夜や室内の手持ち撮影に強く、背景もボケやすいためポートレートなどにも向いています。「大は小を兼ねる」ということで絞り込んでしまえば風景など、画質重視やパンフォーカスな撮影もできてしまいますので、オールマイティに使えるレンズと言えます。
明るいレンズのデメリット
これまで明るいレンズの良いところばかり説明してきましたが、逆にデメリットがないわけではありません。明るいレンズを使うときの注意点についてご紹介していきましょう。
明るいレンズはレンズそのものが大きく・重くなる
明るいレンズはそれだけ多くの光を取り込む必要があるため、レンズの径が大きくなります。これはF値が小さくなればなるほどレンズ径も大きくなるため、明るいレンズを求めれば求めるほど比例してレンズの重さや大きさもアップしていくということですね。
特にレンズ構成が複雑なズームレンズはかなり重くなるので要注意、楽して高画質な写真は撮れないということですね。
明るいズームレンズは価格が高い
ズームレンズでは光のロス率も大きくなるため、レンズ構成を複雑にしなければなりません。明るいレンズにしようとすると技術やコストがとてもかかってしまうので、F2.8通しと呼ばれるズームレンズは非常に高価になります。
一方、単焦点レンズは比較的手ごろな価格帯で明るいレンズが発売されていますので、初心者の方でも手が出やすいレンズです。

上の図は代表的なCanonのキットレンズ(左)と、明るいズームレンズ(右)との比較。ほぼ同じ焦点距離ながら、レンズの直径(フィルター径)は2cm近く大きくなり、重さは約3倍、価格は約4倍(定価換算)の差があります。
明るいレンズの見分け方
一般的に明るいレンズとは開放F値がF2.0未満の単焦点レンズか、F2.8のズームレンズのことを指しますので、カタログやレンズのスペックを見れば容易に明るいレンズかどうか判別できます。型番をチェックしながら、明るいレンズかどうかチェックしてみましょう。

上のレンズは、CanonのAPS-Cモデルのキットレンズと呼ばれる比較的価格の安いレンズです。焦点距離が18-55mmで、開放F値はF4-5.6になっています。つまり焦点距離が18mmのときは開放F値が4になり、焦点距離が55mmのときは、開放F値が5.6になるという意味です。焦点距離によって開放F値も変わりますし、最大でもF4ということなので、残念ながらこのレンズは暗いレンズの仲間になります。

それでは次に上のレンズを見てみましょう。フルサイズ対応の望遠ズームレンズで、定価は30万円もする高級レンズです。焦点距離が70-200mmで、開放F値はF2.8だけの表示になっています。
これはどんな焦点距離であっても開放F値は2.8であり、通しでF2.8の撮影ができるという意味です。これは明るい望遠ズームレンズであり、いずれはこんなレンズで撮影してみたい憧れのレンズと言えます。しかし重さは約1.5kgもあるため、持ち運ぶのが大変ですね。

では、上の単焦点レンズを見てみましょう。これは定価23,000円の比較的手ごろな価格で購入できる40mmのパンケーキ単焦点レンズです。単焦点レンズであるため薄くて非常にコンパクトなのが魅力ですが、開放F値はF2.8となっています。
明るいレンズかどうかと言われると微妙なラインですが、一般的にはF2.0未満の単焦点レンズが明るいレンズと呼ばれていますので、これは厳密に言うと明るいレンズではないということになります。

上のレンズは焦点距離50mm、定価も2万円を切る入門向けの単焦点レンズです。開放F値は1.8と非常に明るく、明るいと胸を張って言えるレンズですね。手ごろな価格で単焦点レンズらしい高画質と、明るいレンズならでわの美しいボケ味が楽しめるおすすめレンズです。

上のレンズはニコンの製品ですね。Canonと少し違うものの、焦点距離や開放F値は同じように型番に表記されています。これは焦点距離が16-80mmで、開放F値はF2.8-4になっています。ズームレンズでF2.8になっているので一見明るいレンズに見えそうですが、望遠側の80mmで撮影すると開放F値がF4になるので残念ながら通しでF2.8にはなりません。
絞りの開放側のみ明るいレンズと言えなくはないですが、カテゴリ分けすると暗いレンズの仲間になります。
高倍率ズームレンズでは明るいレンズは存在しない
高倍率ズームレンズとは、1本で幅広い焦点距離をカバーできるレンズのことで、例えば18mm-200mmなど、ズーム域が幅広いのが特徴です。しかし高倍率ズームレンズは一般的なズームレンズよりもさらに複雑でレンズ枚数が多く、技術的に明るいレンズにするのは無理があると言われています。

上のレンズは定価が30万円を超える高級高倍率ズームレンズですが、見ての通りF3.5-5.6と暗いレンズになります。高倍率ズームレンズは便利な反面、画質や明るさを維持するのは難しいと言われています。
初心者なら手ごろな標準単焦点レンズを買おう
前述したように明るい(F2.8通し)ズームレンズは価格が非常に高いため、次のレンズとしてのステップアップが容易ではありません。
一方で焦点距離20mmから50mm程度の単焦点レンズであれば、比較的手ごろな価格で購入することができます。またズームレンズは開放F値が2.8しかありませんが、単焦点レンズならF2.0以下のスペックが多く、より明るいレンズのメリットを感じることができると思いますので、まずは手ごろな明るい単焦点レンズを狙ってみましょう。
単焦点レンズであればメーカー純正のレンズにも手が届きやすく、単焦点ならではの明るさと画質が手軽に楽しめます。
管理人おすすめの初心者向け単焦点レンズ
ここでは、おこづかいでも買えてしまう初心者向けの明るい単焦点レンズをご紹介いたします。安いレンズでも明るい単焦点レンズで撮れば劇的に描写が変わりますので、ぜひ1つ手に入れてみましょう。
この50mm単焦点レンズは、初心者が最初に買い足すレンズとしてとてもおすすめです。価格も2万円でお釣りが出るほど安く、それでも背景がふわっとぼけるため、スナップや人物撮影などのポートレートにもおすすめです。まずはこの1本を手に入れて、明るい単焦点レンズの醍醐味を楽しんでみてはいかがでしょう。
Canonのミラーレス一眼(RF系レンズ)をお持ちの方は、こちらのRF50mm F1.8 STMがおすすめです。上記の安いEF50mmでもマウントアダプターを取り付ければ使えなくはありませんが、アダプター自体が結構いい値段がしますので、思い切ってこちらを買ってみるとよいでしょう。こちらも明るい単焦点らしいボケ具合と、暗い場所での高速シャッターが期待できます。
明るいレンズと暗いレンズ まとめ
- 明るいレンズは開放F値が小さく、光をたくさん取り込めるレンズのことを言う
- 一般的にはF2.0未満の単焦点、F2.8通しのズームレンズのことを明るいレンズと呼ぶ
- 明るいレンズは暗い場所での手持ち撮影に強く、背景がよくボケるのが特徴
- ズームレンズを中心に明るいレンズは大きく重くなり、価格も高価になる
- 高倍率ズームレンズに明るいレンズは存在しない
- 初心者は手ごろな30-50mm単焦点レンズで明るいレンズの魅力を試してみるとよい
このように明るいレンズは撮影の幅や条件を広げるメリットがあり、レンズの特性を楽しむうえでも是非購入してほしいレンズの1つです。上記を参考に明るいレンズの特徴を理解して、今後のデジタル一眼レフライフに役立ててみてくださいね。