手ブレしないように三脚を使って撮影しているにもかかわらず、なんだか手ぶれしたような解像感のない写真になってしまうことはありませんか?一眼レフカメラには「ミラーショック」とよばれる現象がおこり、固定しているのに手ブレしたような写真になることがあります。ここではミラーショック発生の原因や対策などをご紹介したいと思います。
一眼レフカメラのミラーショックとは
デジタル一眼レフカメラは、ファインダー越しに像が見れるように、シャッターの前にミラー(鏡)が付いています。一眼レフカメラのレンズを外すと、マウントの中に斜めに取り付けられた鏡のようなものがあると思います。
シャッターボタンを押すとこのミラーが上に跳ね上がり、シャッター幕が開いて光イメージセンサーに届き、撮影が終わるとシャッター幕が閉じると同時にミラーが元の位置に戻って撮影が終了します。
この一連の動作は目にも見えないほどの一瞬ですが、この動きがかなり大胆であるため、ミラーがパコパコ動く際にカメラ全体が振動してしまうことで、撮影中に手ぶれが起きているような現状が起きてしまいます。これがミラーショックと呼ばれるもので、ミラーの動きでカメラが振動してしまうことが原因です。
Youtubeにわかりやすい動画があったのでご紹介しておきます。
上の動画では撮影する瞬間、フタのようなものが上に跳ね上がり、それからシャッター幕が開いて撮影が行われていますね。このフタがミラーであり、これが上がったり下がったりする振動で、ぶれが生じてしまうわけです。
これは光学ファインダーのついた一眼レフカメラしか発生せず、ミラーレス一眼カメラやコンパクトカメラ、スマートフォンなどのカメラはミラー自体がついていないのでミラーショックは発生しません。
実際に撮影するとどれくらいブレるのか
下の写真は、実際に焦点距離が200mm望遠レンズで撮影した一部分を切り取ったサンプルです。左は手持ちでそのまま撮影、真ん中は三脚で固定してそのまま撮影、右はミラーアップ撮影を設定し、且つ三脚で固定して撮影してみました。
そのまま手持ち撮影したものは、見るも無残にブレていますね。手すりや照明の支柱もぼやけて見えます。
次に三脚に固定して撮影した真ん中の写真も、手持ち撮影に比べると若干ブレは収まっているように見えますが、まだ少しぼやけて見えます。
最後に三脚で固定してミラーアップ撮影と呼ばれる設定で撮影したものは、ブレがほとんどなく、手すりや照明の支柱もくっきり撮影できているのが分かると思います。
「三脚を使って固定しているし、風もないのに何でボケるんだろう」と疑問に思う人も少なくないようですが、もしかするとミラーショックによる振動でブレた写真になっている可能性があります。
L版サイズ程度に印刷したり、縮小してブログやSNSでアップする程度ならそれほどブレも気になりませんが、切り取って等倍表示させたり、大きなサイズで印刷するとブレは目立つようになります。せっかくですからブレを軽減して撮影したいですよね。
ミラーショックの発生しやすい条件や環境
ミラーショックは一眼レフカメラの宿命でもあり、日々メーカーの努力により影響が小さくなりつつある傾向にあります。しかしショックをゼロにすることは難しいと言えます。中でもミラーショックは発生しやすい条件や環境がありますので、チェックしてみましょう。
ミラーショックは遅めのシャッター速度で発生しやすい
ミラーショックはある特定のシャッタースピードで発生しやすくなります。機種にもよりますが、一般的には2分の1から100分の1程度のやや遅めのシャッター速度で起きやすく、60分の1前後が最も影響を受けると言われています。
これはミラーが上がって振動するタイミングと、露光するタイミングが一致するため、カメラがちょうど振動しているときに記録しているためです。
ミラーショックはシャッタースピードが1/2~1/100秒のときに発生しやすい
シャッター速度がもっと速いと、ブレる速度よりも撮れる速度の方が速いので影響が出ません。また長時間露光の場合もミラーショック程度のブレではほとんど記録されないため、影響はありません。
遅いシャッター速度は夕暮れ、日の出前後の撮影や、室内撮影などの際にこの条件のシャッター速度になりやすいので注意しましょう。
ミラーショックは広角より望遠レンズで発生しやすい
この理屈は手ぶれと同じ要素ですが、広角レンズで撮影するよりも望遠レンズのほうが影響が大きくなります。これは同じぶれ量でも撮影距離が遠いほどブレる距離が大きくなるためです。上記のシャッター速度で望遠レンズを使う時は、よりミラーショック対策が必要と言えます。
ミラーアップ撮影でミラーショックを軽減できる
一眼レフカメラの宿命ともいえるミラーショックですが、対策がないわけではありません。
ミラーショック対策の最も効果的な方法は、ミラーを上げたまま撮影する「ミラーアップ撮影」をすることです。撮影をする前にあらかじめミラーを上げておくことで、ミラーショックがないまま撮影をすることができます。
ミラーアップ撮影をするには、最初に設定を行っておく必要がありますので、ここで簡単にご紹介いたします。(この機能はエントリークラスのカメラでは装備されていない機種もあります)
CANONの場合は、メニューからカスタム機能を選び、ミラーアップ撮影のON/OFFを設定します。
Nikonの場合は、モードダイヤルをMUPに合わせることで設定が可能です。(機種によって違いがあるのでマニュアルも確認ください)
ミラーアップ撮影をONにするとシャッターボタンを1回押すとファインダーが真っ暗になりミラーが上がります。そしてもう1度シャッターボタンを押すと撮影します。(1回の撮影で2回シャッターボタンを押す必要があるため、瞬間を狙うようなシーンではおすすめできません)
また、ドライブモードをセルフタイマーにすれば、シャッターボタンを1回の全押しするだけで、2秒や10秒後に撮影できますので、カメラから手を触れずに撮影することもできます。
またNikonには「露出ディレーモード」という機能もあり、シャッターボタンを押してから撮影するまでの時間を設定することもできます。
ミラーレス一眼カメラは、ミラーがないので問題なし
いままでお話をしてきたのは、光学ファインダーが搭載されている一眼レフカメラのみのお話です。近年主流になりつつあるミラーレス一眼カメラには、そもそもミラーがついていないのでミラーショックは発生しません。
各カメラメーカーも一眼レフカメラの生産を終了し、ミラーレス一眼カメラへシフトしていっていますので、今後はミラーショックによる問題は、過去のことになってしまうかもしれません。
そのほかの注意点
ミラーショックはシャッター速度が60分の1前後で最も発生しやすくなりますから、シャッター速度が60分の1前後になるようなシーンでは、撮った画像を等倍確認してブレていないかどうかをチェックします。縮小された画像ではパッと見ではくっきり写っているように見えるので、必ず等倍に確認して細部をチェックしましょう。
微量なブレが気になるようなら、ミラーアップ撮影を試してみてください。
そのほかカメラによっては、ミラーの動きをゆっくりにして撮影できる「静音撮影」「サイレント撮影」「ソフト」という機能がついているものがあります。
もともとはシャッター音が気になるシーン(美術館や劇場など)で、音を抑えるためのモードですが、ミラーの動作もゆっくりになるため、ミラーショックを軽減する効果もあります。カメラのドライブモードから設定が可能なので、是非ためしてみてください。
上の写真はCanonの設定画面。静音1枚撮影のほか、連続撮影も可能(機種によってできないものもあります)
カメラのミラーショックとミラーアップ撮影 まとめ
- ミラーショックは撮影時にミラーが跳ね上がることで振動してブレてしまう現象
- ミラーショックはカメラ自身がブレるため、三脚に固定していても発生する
- ミラーショックによるブレは、シャッター速度が1/60前後で望遠レンズほど影響が大きい
- ミラーアップ撮影や静音撮影をすれば、ミラーショックを防ぐことができる
- ミラーレス一眼カメラは鏡がついていないのでミラーショックはない
- 1/60前後で撮影した場合は必ず等倍で確認し、撮った画像がブレていないか確認する
せっかく三脚で固定して撮っても、ミラーショックでブレてしまっては台無しになってしまいます。ミラーショックに対してしっかりとした知識を持ち、適切に対処することで失敗のない写真に仕上げることができます。予備知識として是非知っておいてくださいね。