レンズ等でよく使われる用語として、「35mm換算で50mmの焦点距離」だとか、「このカメラは35mm換算で・・・」というのを見たり聞いたりしたことはないでしょうか。ここでは、フルサイズやAPS-Cサイズのカメラを使ううえで、正しい画角を得るための知識についてご説明させていただきますので、しっかりと理解しておきましょう。
35mmとはフィルムの幅のこと
フルサイズとAPS-Cサイズの違いというコーナーでも詳しくご説明しておりますが、デジタルカメラが開発される前は、写真撮影にフィルムが使われていました。フィルムの幅は特別なものを除いて35mmと統一されていたため、どんなカメラ、レンズを使っても焦点距離や画角は同じでした。
上の図は、フィルム式カメラのフィルムの大きさです。写真一枚あたりのフィルムの大きさは縦が24mm、横が36mmでした、そしてフィルムの幅が35mmで構成されていました。
時代が進むにつれ、デジタルカメラが開発され、フィルムの代わりに光を電気信号に変えるイメージセンサーが生まれました。
しかしイメージセンサーの大きさは35mmのフィルムとは異なり、カメラや機種ごとに変わってしまうことになってしまいました。これにはコンパクトさの要求に応えたり、できるだけ低コストでイメージセンサーを作って価格を抑えるカメラを開発したかったなど、さまざまな理由がありました。
イメージセンサーの大きさが異なってしまうと、焦点距離が同じレンズを装着しても、撮像素子の大きさによって画角が変わってしまうという問題が発生します。
35mmのフィルムと同じ大きさであるフルサイズの撮像素子を搭載しているデジタルカメラであれば、レンズの表記通りの画角で撮影できますが、APS-Cサイズやフォーサーズなどの小さい撮像素子を搭載したデジタルカメラでは、画角が狭くなってしまいます。
上の図のようにフィルムカメラの場合はフィルムの大きさが同じであるため、35mmフィルムを使うカメラであればどのカメラに装着しても、50mmのレンズは画角46度(対角線)で撮影することができます。つまりカメラによって写る範囲が変わってしまうことはありません。
しかし、デジタルカメラの場合に、カメラの種類によって撮像素子(イメージセンサー)の大きさが異なってしまうため、焦点距離が50mmのレンズをつけると、違う画角で記録されてしまいます。例えばフルサイズカメラであれば、50mmで46度の画角で撮影できますが、APS-Cサイズなら32度、フォーサーズカメラなら24度と写る範囲が狭くなり、望遠気味に撮影されてしまうことになります。
レンズと同じ焦点距離の画角で撮影できるのはフルサイズカメラだけで、APS-Cサイズのカメラやフォーサーズサイズのカメラですと画角が変わってしまい、本来の範囲より狭い範囲しか撮影できなくなってしまいます。
どうやって適正な焦点距離や画角を見分ける?
35mmのフィルム時代の流れから、今現在発売されているレンズの表記はこの35mmのフィルムを使ったものを基準として表記されています。
一般に言う人間の視野に近い標準レンズというのは50mmといわれていますが、これはフルサイズ機で撮影したときに得られる画角46度(対角線)のことで、実際にAPS-Cサイズやフォーサーズに50mmのレンズを装着すると。「えっ!めっちゃ望遠に写ってしまう」となってしまいます。
ですのでAPS-Cサイズで50mm相当(画角46度)のレンズが欲しいといったときには、50mmよりもっと焦点距離が短いレンズを選ばなければなりません。
じゃあAPS-Cサイズで50mm相当の画角が得られるレンズは何mmのレンズを用意すればいいか?ということになりますよね。
そこで登場するのが35mmに換算すると・・・という計算方式です。
シャッター速度を1/5より速くすると、このようにモクモクと出る水蒸気を止めることができ、臨場感あふれる写真になります。
35mm換算表
下の表は35mmの換算表です。APS-Cサイズは撮像素子のサイズで1.5倍と1.6倍があります。ニコンやソニー系は1.5倍、Canon系は1.6倍した値です。あくまで目安であるため、詳しくはカタログや仕様に表記してある事実表記を確認してください。
レンズの焦点距離 (フルサイズ機) | 画角 (対角線) | 24.0×16mm APS-C (x1.5) | 22.5×15mm APS-C (x1.6) | 17.3×13mm フォーサーズシステム |
5mm | 154 | – | – | 10mm |
6mm | 149 | – | – | 12mm |
7mm | 144 | 11mm | 11mm | 14mm |
8mm | 139 | 12mm | 13mm | 16mm |
9mm | 135 | 14mm | 14mm | 18mm |
10mm | 130 | 15mm | 16mm | 20mm |
12mm | 122 | 18mm | 19mm | 24mm |
14mm | 114 | 21mm | 22mm | 28mm |
16mm | 107 | 24mm | 26mm | 32mm |
18mm | 100 | 27mm | 29mm | 36mm |
20mm | 94 | 30mm | 32mm | 40mm |
24mm | 84 | 36mm | 38mm | 48mm |
28mm | 75 | 42mm | 45mm | 56mm |
30mm | 72 | 45mm | 48mm | 60mm |
35mm | 63 | 53mm | 56mm | 70mm |
40mm | 57 | 60mm | 64mm | 80mm |
50mm | 46 | 75mm | 80mm | 100mm |
60mm | 40 | 90mm | 96mm | 120mm |
70mm | 34 | 105mm | 112mm | 140mm |
80mm | 30 | 120mm | 128mm | 160mm |
90mm | 27 | 135mm | 144mm | 180mm |
100mm | 24 | 150mm | 160mm | 200mm |
120mm | 20 | 180mm | 192mm | 240mm |
140mm | 18 | 210mm | 224mm | 280mm |
160mm | 15 | 240mm | 256mm | 320mm |
180mm | 14 | 270mm | 288mm | 360mm |
200mm | 12 | 300mm | 320mm | 400mm |
250mm | 10 | 375mm | 400mm | 500mm |
300mm | 8 | 450mm | 480mm | 600mm |
400mm | 6 | 600mm | 640mm | 800mm |
500mm | 5 | 750mm | 800mm | 1000mm |
600mm | 4 | 900mm | 960mm | 1200mm |
800mm | 3 | 1200mm | 1280mm | 1600mm |
カタログに記載されているレンズの焦点距離表記は一番左側ですので、フルサイズ機ならそのままの焦点距離のレンズを準備します。例えば標準レンズの画角程度(46度)のレンズが欲しい場合、APS-Cなら30~35mmのレンズ、フォーサーズなら24mmのレンズを用意することで、同じ画角で撮影できます。
APS-C機を使っている人は、間違ったレンズを購入しないように
ネットや雑誌の情報などでも「50mm=標準レンズ」「50mmは人間の視野くらい」「基本は50mmレンズ」などとうたっているため、50mmの単焦点レンズを買ってステップアップしようと考えている人も少なくありません。
しかしAPS-Cサイズのカメラに50mmの焦点距離のレンズを装着しても、人間の視野にはならず、実質75mmから80mmのレンズをつけているのと同じ状態になるため「50mmの標準レンズを買ったのに、望遠すぎて使えない!」という失敗談もよく聞かれます。
APS-Cサイズのレンズを購入するときは、フルサイズの画角と混同しないようにぐれぐれも注意しましょう。
カタログに掲載されている「35mm換算」をチェック
左の図は、あるAPS-C用のレンズのカタログの切り抜きですが、品番はEF-S24mmと表記してあるので、焦点距離が24mmのレンズであることがわかります。しかし35mm換算したときの実際の焦点距離は、赤線で示してあるように38mm相当となっています。
これは、フルサイズなら24mmの焦点距離ですが、APS-Cサイズのカメラでは38mmのレンズと同じくらいの画角が得られるという意味です。
APS-Cサイズやフォーサーズ専用のレンズには、必ず35mm換算の焦点距離が記載されています。35mm換算はフルサイズにしたときにどれくらいの焦点距離と同等になるのかを示した値になりますので、購入前にチェックしておき、自分の求めている画角になっているかどうか確認しておくことが大切です。
またフルサイズ用のレンズを買う際は、その焦点距離から1.5倍ほどさせた値が実質のAPS-Cの焦点距離になりますので、頭の中に入れながら購入を検討するようにしてください。
カメラの35mm換算とは まとめ
- 35mmとはフィルムの幅のことを言う
- イメージセンサーの大きさによって、同じレンズでも写る範囲が変わってしまう
- 焦点距離ではなく、画角を基準に理想のレンズを探す
- APS-Cではフルサイズレンズの1.5~1.6倍した焦点距離の画角しか写らない
- レンズの焦点距離の値のみを意識すると、買ってから失敗するケースがある
- 必ず35mm換算で何ミリになるのか、画角はどれくらいになるのかをチェックしておく
フルサイズから始められる人にとってはそれほど問題ではないものの、APS-Cやフォーサーズカメラから始められる場合は、新しくレンズを購入するときには要注意です。上記を参考にセンサーサイズによる画角の違いを理解し、レンズ購入や焦点距離の目安にしてみてください。