明るい空などを撮影した写真を見ると、四隅が少し暗くなっていた経験はないでしょうか。また点光源を美しい玉ボケ写真にしようと撮ったのに、何かレモンや欠けた月のような形になって、まんまるにならないことはないでしょうか。レンズかカメラが壊れたかのように見えますが、これらは光学レンズ特有の現象であり故障ではありません。ここでは口径食とケラレについて学んでいきましょう。
カメラ・レンズの口径食とは
口径食とはカメラ用語の1つであり、日食や月食と同じで口径が食べられてしまうことを意味します。つまり入った光が欠けてしまうことで、写真の中心部と隅で明るさに違いが現れます。
口径とは交換レンズの一番前のレンズのことを言い、最初に光が入る入口を指します。光は常に平行ではなく、斜めから入り込んでくる光もあります。斜めから入ってくる光は他のレンズの径に邪魔されるため中心に比べると入ってくる光の量が減ってしまう性質があります。これを口径食と呼び、障害となって画像に映り込みます。
口径食は周辺光量の低下を招く
下の写真は、青い空を絞り開放で撮影してみました。
見てわかるように、写真の中心部は明るいですが、隅になるほど暗くなっていることが分かります。特に四隅はかなり暗くなっていることが分かるのではないでしょうか。
このように口径食は写真の外側に向かって光量が低下する性質をもっていますので、四隅が暗くなる現象が起きてしまいます。
それではこの写真はどうでしょう、先ほどの写真に比べると隅の暗さもほとんど感じないのではないでしょうか。これはF値を高くして、絞り込んで撮影した写真です。
絞りを絞り込むことで光の入る角度が中心寄りになるため、光の通り道が円形となり食の影響をうけにくくなります。口径食は開放F値(めいっぱい絞りを開けた状態)で、明るい被写体のときに目立ちやすくなりますので、程よく絞って撮影すれば目立たなくすることが可能です。
またフルサイズ用のレンズを使ってAPS-Cサイズのカメラで撮影した場合も、レンズのイメージサークルに比べて撮影領域が小さいため、開放で撮影しても周辺減光の影響が少なくなります。
口径食は点光源のボケがまんまるにならない
では次の写真を見てみましょう。美しいイルミネーションを前ボケと奥ボケで撮影した写真です。
これも絞りを開放で撮影した写真ですが、写真の隅のほうでは玉ボケがまんまるではなくレモンのような形になっているのがよくわかるかと思います。
それでは、ここで簡単な実験をしてみたいと思います。
ラップやアルミホイルの芯を用意して、中からのぞきこんで景色を見るとしましょう。今回は壁にある時計を見てみます。
筒の中心から時計を見ると、丸い時計がしっかりと丸く見えますね。
今度は少し見る位置を端のほうにしてみます。そうすると時計の一部が筒に邪魔されて、まんまるに見えなくなってしまっています。この現象と同じように写真の周辺部では欠けて見えない部分がレモンのような形になって、ボケた光源が写り込みます。
これも絞りを絞り込むことで減少を軽減することができますが、ボケの醍醐味は絞りを開放することにあるので相反してしまうのがネックと言えます。できるだけ被写体に近づいて撮影すれば被写界深度が浅くなるので、少し絞り込んでも綺麗な玉ボケ写真が撮れます。
ケラレは物理的な影が写り込んでしまう現象
レンズの特性上発生してしまう口径食とは別に、物理的な影が写ってしまう現象をケラレといいます。ケラレは注意することで防ぐことができますが、原因としては以下のようなものが挙げられます。
レンズフードが写りこむ
上の写真、変なものが左右に写っていますね。花型レンズフードの向きを間違えて取り付けてしまうと、こんな感じになります。本来写らないフードの影が写りこんでしまっています。
純正のレンズフードや筒形のレンズフードを使う分には問題ないですが、汎用のレンズフードや花形のレンズフードを使う時は映り込みがないかよく確認しましょう。
レンズフィルターが写り込む
写真の四隅に変な影が黒く映っていますが、これはフィルターの枠が写り込んでいる現象です。パソコンの大きな画面で見るとよく目立つのですぐわかりますが、フィルターの取り付け方によっては影が僅かしか見えないため、カメラ液晶画面だけ見ただけではわからないこともあり、撮影が終わってから全滅した… という失敗談を聞くこともあります。
広角レンズで発生しやすく、枠が厚い(高い)フィルターを使用していたり、フィルターにフィルターを重ね付けしている場合などに要注意です。
内臓フラッシュによる影の写り込み
下になにやら山のような影が写りこんでいますね。これはレンズフードをつけたままフラッシュを使って撮影したため、フラッシュの光がフードに邪魔されてそこだけ黒くなってしまっています。こういったものもケラレの一種です。フラッシュを使うときは必ずレンズフードは取り外しましょう。
口径食による周辺減光はソフトを使って補正することもできます
周辺減光はレタッチソフトなどを使用することで、補正することができます。レンズには個々それぞれの特性があるため、それらの特性を逆手にとって補正することで、より自然に近い写真に仕上げることができます。補正内容には「周辺減光」「歪曲収差」「色収差」などがあり、使用したレンズのプロファイルを使うことで、これらの癖を補正してバランスよくしてくれる便利な機能です。
プロファイル補正はRAWで撮影したファイルで使うことができますが、絞り開放で撮影した写真や、特に星空や夜景の撮影でも効果を発揮します。周辺減光のほか歪みや色の補正も行ってくれるため、使いこなせるようになれば頼もしい存在です。
上の写真は補正前です。(四隅が少し暗くなっているのが分かります)
これが補正後の写真です。レンズ補正処理により、周辺減光を自動的に補正しました。
Photoshop Lightroomでは、カメラのメーカーやレンズの品番ごとにプロファイルが内臓されており、ワンタッチで色収差やゆがみ、周辺光量を自動的に補正してくれます。補正量などを細かく調整することもできます。
カメラ・レンズの口径食とケラレ まとめ
- 口径食は斜めから入る光の量が減少し、写真の中心と隅で明るさが変わってしまうこと
- また点光源をぼかした場合、写真の周辺部ではレモンのような形になる
- 口径食は絞りを開放したときに発生するので、絞りを絞り込むと軽減できる
- ケラレは物理的なもの(フードやフィルター)が写り込んでしまう現象
- 周辺減光はRAWで撮影したファイルならレタッチソフトなどで補正することが可能
このように口径食は絞りを開放することで発生しやすくなりますので、絞り込めば大幅に改善できます。上記を参考に口径食とケラレの意味を理解していただき、今後の撮影に活かしてみてください。