バスや列車の行先案内表示や街の電光掲示板を撮影すると、表示が途切れてはっきり見えない写真になったことはないでしょうか。これはフリッカー現象と呼ばれるちらつきによるもので、シャッター速度と密接な関係があります。ここではフリッカー現象の原因と対策についてご紹介いたします。
LEDや蛍光灯はチカチカしている
部屋の中を照らす蛍光灯やイルミネーションが美しいLEDの光。私たちの目から見るとずっと点灯しているように見えますが、実はとても速い速度で点灯と消灯を繰り返しています。
例えば、ご家庭や事務所の蛍光灯の場合、その点滅速度は1秒間に100~120回になるため、肉眼でも捉えることができません。あまりに速く点滅しているため、人の目から見るとずっと点灯しているように見える訳です。
イルミネーションなどのLED照明や、バス、列車の行先案内表示、道路などに設置してある電光掲示板なども同じで、とても速い周期で点滅を繰り返しています。
蛍光灯やLEDなどの点滅を繰り返すちらつきのことをフリッカー現象と呼び、写真撮影においてさまざまな影響を及ぼします。
シャッター速度が速いと、点灯や消灯のタイミングで撮影されてしまう
写真を撮られるときにまばたきをしてしまうと、目が閉じて写ってしまうことがありますよね。あれは目が閉じているタイミングのときにシャッターが切れてしまうから起きてしまう現象です。
LEDや蛍光灯も、いわば1秒間に100~120回のスピードでまばたきをしているのと同じですから、目を閉じているとき、つまり消灯しているときにシャッターが切れてしまえば、当然消えて見えてしまいます。
例えば、1秒間に120回点滅しているLEDに向けて、120分の1より速いシャッター速度で写真を撮った場合、ちょうど点灯しているタイミングでシャッターを押せば明るく点灯しているLEDを撮影することができますが、消灯しているタイミングでシャッターを押せば真っ暗なままになってしまいます。
上の図のように赤いタイミングのところでシャッターが切れると、点灯した表示をみることができますが、青いタイミングのところでシャッターが切れると、消灯したまま写真に写ってしまいます。
電光掲示板や蛍光灯の下で撮影するとどうなる
フリッカー現象が出やすい電光掲示板を見てみましょう。
これはシャッター速度1/640で撮影しました。何やら文字の一部が点灯しているように見えますが、途切れていて表示がよく分からなくなっています。
これも駐車場の電光掲示板です。1/1250秒で撮影しました。ごく一部だけが点灯しているため、何と表示されているか分かりません。
このように電光掲示板は、全てのLEDが同じタイミングで点滅しているのではなく、波のように点滅していることが多いため、一部分だけが点灯しているように撮影されます。
それでは次に下の写真を見てください。
今度は室内の蛍光灯の下で1/500秒のシャッター速度で撮影してみました。何やら上半分が黄色く暗くなっているのがわかりますよね。
蛍光灯も1秒間に100~120回周期で点滅しているため、タイミングによっては変な色になってしまうことがあります。うまい具合に完全に点灯したタイミングで撮影できれば、こんな写真にはなりませんが、消灯したタイミングや、最大まで点灯していないタイミングでシャッターが切れると、上の写真のように途中で色が変わるような露出むらが起きます。
これは、デジタル一眼レフ・ミラーレス一眼カメラの多くにフォーカルプレーンシャッターとう方式のシャッターが使われており、これは先幕と後幕という2枚のシャッター幕を持っています。
先幕と後幕の動くタイミングの差を調整することでシャッタースピードを調整するわけですが、上から下へ流れるようにシャッターが動くので、動いている途中でチカチカ明るさが変わると、上のような途中で色が変わったような写真になります。
これはブラウン管のテレビ画面などを撮影したときもこうなります。
フリッカー現象を回避するには
フリッカー現象を回避する手っ取り早い方法としては、点滅の周期よりも遅いシャッター速度で撮影すれば問題ありません。
上の図のように、点滅する速度よりも遅いシャッター速度で撮影すれば、どのタイミングで撮影しても明るい部分が入るためフリッカー現象による影響は出ません。
フリッカーを回避する効果的な方法は、遅いシャッター速度で撮影することです。
シャッター速度を1/60まで落として撮影。今度はLED表示全体が点灯しているため、駐車場案内の表示もよくわかります。
シャッター速度を1/60まで落として撮影。黄色く暗くなっている部分がなくなり、自然な色合いで撮影することができました。
フリッカーレス撮影機能を使う
一部のデジタル一眼レフカメラには、フリッカーレス撮影ができるものがあります。これはカメラが蛍光灯などの点滅を自動的に検知して、速いシャッター速度でも最大で点灯しているタイミングでシャッターを切ってくれる優れものです。
カメラによって呼び名が違いますが「フリッカーレス撮影」「フリッカー低減機能」などと呼ばれています。
フリッカーレス撮影機能が最初に搭載されたカメラは、2014年10月にCanonから発売されたEOS7D MarkⅡであり、当初は上位クラスのカメラだけに搭載されていましたが、現在では下位クラスのカメラでも搭載され始めています。
特に室内で激しく動き回るスポーツ写真を連写で撮影する場合や、パーティ、結婚式の写真などにも有効な機能ですが、シャッターボタンを押してからシャッターが切れるまでに若干のタイムラグが発生するので、注意してください。
どんな場面でフリッカー現象が起きやすい
電光掲示板全般は要注意
公共にある電光掲示板全般はフリッカー現象が出やすいので要注意です。駅の掲示板、駐車場案内や道路情報などはもちろんですが、ビルなどに設置されているLEDの大型ディスプレイなどもフリッカー現象が起きます。このほか、バスや列車の行先案内表示なども表示が途切れたりしやすいと言えます。
グロースタート式の蛍光灯下
近年ではずいぶん減り、その姿を見なくなってきましたが、グロースタート形と呼ばれる点灯管を使用した蛍光灯は、電源が50Hzの地域では1秒間に100回、60Hzの地域では120回点滅しています。このような照明器具を使った下で撮影すると露出むらが起きるので、1/120秒以上のシャッター速度で撮影しないようにしましょう。
インバーター回路を搭載している照明器具では、もっと速い速度で点滅しているため、フリッカーの影響をあまり受けません。また家庭用のLED照明は専用の回路を通している器具が多いため、フリッカーの影響が受けにくいようになっています。
ブラウン管式のテレビやディスプレイ
こちらも最近はかなり少なくなってきましたが、ブラウン管のテレビやモニターもフリッカーの影響が受けやすいです。液晶ディスプレイも、初期のものはフリッカー現象が起きていましたが、2010年頃からフリッカーレスのディスプレイが登場してきているため、現在では液晶ディスプレイを撮影してもちらつきはほとんど起きません。
イルミネーションなどのLED照明
屋外でのイルミネーションなどのLED照明もフリッカー現象が起きているものがあります。しかし夜の屋外ではスローシャッターになりやすいため、フリッカー現象の影響は少ないと言われています。
フリッカーによる写真の影響と回避対策 まとめ
- LEDや蛍光灯は一定の周期で点滅を繰り返している
- 消えたタイミングで撮影すると、暗くなったり露出むらが生じる
- 点滅周期よりも速いシャッター速度で撮影することが原因
- 電光掲示板を撮ると一部が暗くて読めなくなり、蛍光灯下で撮ると色が変になる
- 回避策としては、シャッター速度を点滅周期よりも遅くして撮影するとよい
- フリッカーレス機能を使うと高速シャッターでもカメラが自動的に明るい部分で撮ってくれる
フリッカー現象によるさまざまな写真の影響をお分かりいただけましたでしょうか。効果的な回避策としてはシャッター速度を遅くすることですが、動いている被写体などはブレてしまうことがあるので、フリッカーレス撮影機能などを上手に活用するようにしてください。