お店などでもらってきたカタログや、レンズメーカーのWEBサイトを見ながらレンズを選ぶのは楽しいものです。どんなメーカーからどんなレンズが出ているのだろうといろいろ見てみるのは、レンズの知識向上にもつながりますし、やっぱり見ていて面白いですね。
しかしカタログには、難しい用語や意味のわかりにくい表記も多々あり、何を意味するのかに困ることも多いかと思います。
ここでは、カタログなどによく出てくるレンズ用語を解説していきたいと思います。
まずは基本的な焦点距離と開放F値のチェック
品番はカメラやレンズメーカーによって異なり、様々な数字やアルファベットが組み合わされて構成されています。メーカーごとに固有の呼び名などもあるため、違うメーカー同士では単に品番を見るだけでは比較できません。
ただし、最も基本となるレンズの焦点距離と開放F値はどのレンズメーカーの共通して表記されているので、まずはこの2つをチェックしましょう。
50mm F2.0
上は単焦点レンズの基本的なスペック表記です。50mmはそのレンズの焦点距離、F2.0はそのレンズの開放F値を表しています。これはどのメーカーのレンズでも共通して表記されています。
18-55mm F3.5-5.6
ズームレンズの場合は焦点距離表記に広角側と望遠側の2つの数字が記載されています。上の場合は広角側が18mm、望遠側が55mmで焦点距離が可変できることを意味します。開放F値もそれぞれ広角側でF3.5、望遠側でF5.6と、焦点距離によって開放F値が可変するレンズです。
24-70mm F2.8
廉価版のレンズは焦点距離によって開放F値が可変しますが、明るいズームレンズはF値が固定されており、上のようにF2.8とだけ表記されます。この場合はどんな焦点距離であっても開放がF2.8で撮影することができ、F2.8通しズームレンズと呼ばれております。
F2.8通しのズームレンズを大三元レンズと呼び、F4通しのズームレンズを小三元レンズと呼びます。それぞれの焦点域(14-35・24-70・70-200)の3つのレンズでの開放F値固定の通しレンズは、いつかは手に入れたい憧れのレンズと言えますね。
Canon系レンズの表記の見方
Canon系レンズの表記の見方を見てみましょう。Canonミラーレス一眼カメラの、いわゆる初心者向けのキットレンズに表記されている品番(スペック)と、高級レンズのスペックを見てみましょう。
RF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STM
RF 24-70mm F2.8 L IS USM
EF 35mm F1.4 L Ⅱ USM
Canonマウント
Canonの場合は一眼レフ規格のフルサイズ「EF」、APS-C規格の「EF-S」「EF-M」、ミラーレス規格の「RF」、ミラーレスのAPS-C規格の「RF-S」などがあります。
Lレンズ
F値の表記の後に「L」と表記されているものは、Luxury(贅沢な)という意味で、頭文字をとってLレンズと呼ばれます。Lレンズは光学性能が高い、いわゆる高級レンズに表記されています。高級なだけあって、お値段も10万円を超えるようなレンズが多く、憧れのレンズ群と言ってもよいでしょう。
Lレンズには品番に赤色でLと表記されているほか、Lレンズを表す赤いリングがレンズに施されています。
レンズ内手振れ補正機能
品番に「IS」と表記されているものは、(Image Stabilizer)の略で、レンズ内で手振れ補正機能がついているレンズのことを言います。以前は高性能レンズしかついていない機能でしたが、構造が簡素化され、一般クラスのレンズでもズームレンズを中心に採用されています。
世代
同一の品番であっても新型が発売されると、旧製品と区別するために世代番号が表記されます。初代には表記されませんが、2代目になると「Ⅱ」、3代目になると「Ⅲ」と表記されます。
AFモーター種類
モーター種類はピント合わせに使用するモーターの種類を示しています。Canon系のレンズでは、STMステッピングモーター(Stepping Motor)と、USM超音波モーター(Ultrasonic Motor)の2種類が使われています。USMの方が静かで素早くピントを合わせることができるため、高級レンズを中心にUSMが使用されています。
Nikon系レンズの表記の見方
NikonレンズはCanon系とは違い少し表記が複雑になります、その分詳細まで良くわかりますが、初心者には何のこっちゃ?という記号もたくさんあるので、要点だけ押さえておきましょう。
NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
AF-S DX NIKKOR 18-140mm F3.5-5.6 G EDVR
Nikonマウント
NikonマウントレンズにはNIKKOR(ニッコール)と表記されます。また、NIKKORの後にZと表記されているものはZマウントと呼ばれ、Nikonのミラーレス系一眼に装着できるレンズを意味します。Zの表記のないものはFマウントと呼ばれ、一眼レフ系カメラはもちろん、マウントアダプターを取り付ければ、Zマウントのカメラにも装着可能です。
レンズ種
Nikonにはフルサイズ用の規格としてFX規格と、APS-C用の規格としてDX規格があります。DX規格のレンズにはどこかにDXと表記されますが、FX規格のレンズには何も表記されません。レンズの品名の中にDXの表記がないものはフルサイズのFX規格と思ってもらえればよいでしょう。
S-Lineレンズ
S-Lineはいわゆる高級レンズを意味する言葉で、Canonで言うLレンズのNikon版だと思ってもらえればよいでしょう。厳格な品質管理、高い光学性能が売りで、Nikon自慢のレンズ群と言えるでしょう。よいレンズだけあって価格は高めです。
レンズ内手振れ補正機能
品番に「VR」と表記されているものは、(Vibration Reduction)の略で、レンズ内で手振れ補正機能がついているレンズのことを言います。近年ではボディ内手振れ補正機能が高くなったため、特にZマウントの広角・標準レンズでは、手振れ補正機能を省いているものが多くなっています。
絞りタイプ
Gはレンズに絞りリングが未搭載という意味で、絞りはカメラ本体で調整します。一方Dと表記されているレンズはレンズ自体に絞り調整リングがあり、まわして絞りを調整できる機能がついたレンズです。一部の単焦点レンズなどに搭載されています。最近では絞りはカメラで調整するのが一般的なので、Zマウントレンズにはこの表記はありません。
EDレンズ
EDは特殊低分散ガラスを搭載しているという意味です。色にじみや色収差などを押さえる働きがあります。以前は中性能クラス以上のレンズに多く採用されており、差別化をはかるため品番に表記されていましたが、Zマウントになってから表記が省略されました。
Zマウントレンズでは、一部の廉価単焦点レンズをのぞき、ほとんどのレンズにEDレンズ、およびスーパーEDレンズが搭載されています。
AFモーター種類
モーター種類はピント合わせに使用するモーターの種類を示しています。Nikon系のレンズでは、STMステッピングモーター(Stepping Motor)と、SWM超音波モーター(Silent Wave Motor)の2種類が使われています。表記はステッピングモーターがAF-P、超音波モーターがAF-Sで表記されます。
一眼レフカメラの場合は、位相差検知方式を採用していたため、超音波モーターのほうが速くてピント合わせの精度が高かったものの、像面位相差方式がメインのミラーレス一眼では、超音波モーターの恩恵が少ないため、Zマウントのレンズでは全機種にステッピングモーターが採用されています。
そのためNikonのZマウントのレンズにはモーター種類は省略されています。
基本的なスペック表(仕様)を理解しよう
品番の大まかな理解ができたところで、次にそのレンズのスペック(仕様)を理解しましょう。下の図はCanonのあるレンズの仕様を表にまとめたものです。
品番 | RF24-105mm F4-7.1 IS STM |
画角(水平・垂直・対角線) | 74°~19°20′・53°~13°・84°~23°20′ |
レンズ構成 | 11群13枚 |
絞り羽根枚数 | 7枚(円形絞り) |
最小絞り | 22(24mm時)、40(105mm時) |
最短撮影距離 | AF時:0.2m(24mm時)、MF時:0.13m(24mm時) |
最大撮影倍率 | AF時:0.4 倍(105mm)、MF時:0.5 倍(24mm) |
フィルター径 | 67mm |
最大径×長さ | 約φ76.6×88.8 mm |
質量 | 約395g |
品番の見方については前述したとおりですが、おさらいしておきましょう。
RFマウント(ミラーレス用)で、焦点距離が24~105mm、開放F値は広角側でF4、望遠側でF7.1、ISはレンズ内手振れ補正機能付きで、STMはステッピングモーター搭載ということになります。
レンズ構成
レンズ構成はレンズが何枚使われていて、何グループになっているかというものです。レンズの枚数が多いほど高性能なレンズという意味ではなく、ズームレンズほど複雑なレンズ構成が必要なため、枚数が多くなる傾向があります。レンズ枚数が多いほど光のロスや屈折も多くなるため、高い技術が必要になります。
絞り羽根枚数
絞り羽根の枚数です。多いほどぼかした時が美しくなりやすいですが、多い=高画質ではありません。一般的には6~9枚程度が出回っています。絞り羽根が偶数のときと、奇数のときで光芒の出方が異なります。また円形絞りを使っている方が自然なたまボケを表現できます。
最小絞り
最小絞りは、開放F値とは逆に、目いっぱい絞れる限界の数値を示しています。数値が固定されているものもあれば、開放側と広角側で最小絞り値が異なるものもあります。あまり絞りすぎると小絞りボケ(回折現象)が発生し、画質が低下してしまいますので、最小絞りまで絞り込むことは日常の撮影ではあまりありません。目安程度に考えておきましょう。
最短撮影距離
撮像素子から被写体までの最短撮影距離です。簡単に説明すると、被写体にどこまで近づけるか・・ということですね。近ければ近いほどアップで撮影できます。オートフォーカス使用時と、マニュアルフォーカス使用時で異なる場合があり、マニュアルだとより近づいて撮影できるレンズもあります。
最大撮影倍率
最大撮影倍率とは、どこまで被写体を大きく写せるかの目安です。1/4や0.25倍などと表記されています。1/4も0.25倍も同じ意味です。マクロレンズなどでは1/1、1倍と等倍で撮影ききる物もあります。
撮像素子と同じ大きさの切手を撮影した場合、1倍だと画面いっぱいに切手を映せます。0.25倍だと目いっぱい寄って撮影しても、画面の25%しか写せません。もちろんズームレンズの場合は望遠側にしたときに最も拡大して撮影できます。
フィルター径
フィルター径とは、レンズの先端に取り付けることができるレンズフィルターやプロテクターの直径サイズのことを言います。直径はmm単位で、52.58.62.68.72・・・・と表記されています。62なら直径62ミリという意味です。プロテクターなどは同じ口径のものを選びましょう。
最大径×長さ・質量
最大径×長さは、レンズの一番太い部分の直径と、レンズ先端からマウント部までの長さのことを言います。レンズのサイズということになりますね。質量とはその名の通りレンズの重さのことです。
交換レンズの品番とスペックの見方 まとめ
- 品番の基礎的チェックは焦点距離と開放F値から
- Canon系レンズの品番はシンプルでわかりやすい
- Nikon系レンズの品番はやや複雑で表記が省略されている場合がある
- 品番のほか、各メーカー共通の仕様があるのでチェックしておく
交換レンズの品番は、レンズの大まかなスペックを把握することができ、仕様をチェックすることでさらに詳細を確認することができます。これ以外にも付加価値がついた固有の用語がたくさんあるので、ぜひチェックしておきましょう。