デジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラの大きな特徴の1つとして「レンズを交換できる」ことが挙げられます。しかし初心者人はセットで買ったキットレンズをずっとつけっぱなしにして使っていることが多いと言われています。
せっかくレンズが交換できるカメラを手に入れたのですから、交換レンズをラインナップの1つに加えてみるのもよいのではないでしょうか。ここではデジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラの交換レンズの種類や特徴についてご紹介したいと思います。
交換レンズの種類はさまざま
一言にデジタル一眼レフ・ミラーレス一眼用の交換レンズと言いましてもその種類はさまざまで、どんなものを撮りたいか、どのようなシーンで撮るのかなど、目的や用途、予算などたくさんの要素があります。
交換レンズは主に「単焦点レンズ」と「ズームレンズ」の2つに大別され、これ以外のレンズはありません。そこから焦点距離(画角)に応じて呼び名があり、大まかに分類することができます。
上の図は交換レンズの種類を大きく大別させた表ですが、見ての通りたくさんありますよね。1つずつ掘り下げてチェックしていきたいと思います。
単焦点レンズ
単焦点レンズは焦点距離が固定されたレンズのことを言います。スマートフォンのカメラの倍率可変ができない単焦点レンズですね。(スマホは引き延ばしてズームできますが、画質は低下します)
単焦点レンズは構図の範囲を決めるときに、撮影者自らが離れたり寄ったりしなければなりませんが、構造がズームレンズに比べると簡単で、暗い場所の手持ち撮影に強く、背景が美しくボケるメリットを持っています。
またズームレンズに比べると画質も高くなる傾向があり、コンパクトで持ち運びが容易という特徴も持っています。
単焦点レンズ50mmで撮影。暗い場所での手持ち撮影と美しいぼけが魅力です。
単焦点レンズは焦点距離が8mm前後から600mm程度までのものがあり、それぞれの焦点距離に合ったものを準備する必要があります。1つ1つ集めてしまうととんでもない数のレンズが必要になるので、まずは30~50mmくらいの焦点距離のレンズを買ってみるとよいでしょう。
単焦点レンズのメリット
- ズームレンズに比べるとレンズ構成が簡単で価格も手ごろなものが多い
- 開放F値が低く設定できるため、夜間や室内の手持ち撮影に有利
- 被写界深度が浅く、美しいボケが手軽に撮影できる
- 小さくコンパクトなものが多いので、機動性に優れる
単焦点レンズのデメリット
- ズーミング(倍率調整)ができないので、広角-望遠のフットワークが悪い
- それぞれの焦点距離に合ったレンズを準備・買い揃える必要がある(24・50・100・200mmなど)
ズームレンズ
ズームレンズは焦点距離が可変できるレンズで、広角・望遠と引いたり寄ったりなどズーミングが瞬時に行えるのが特徴です。単焦点に比べると柔軟性が高く、フットワークに優れているのがメリットと言えます。
焦点距離の幅のバリエーションは多く、広角・標準・望遠それぞれの域で可変できるようなものもあれば、レンズ1本で広角から望遠までカバーできるような高倍率ズームと呼ばれるレンズもあります。
ズームレンズは持ち運ぶレンズの数を少なくしたり、レンズ交換の手間を省くことができます。せっかくのシャッターチャンスにその都度レンズを交換していたら、撮れるものも撮れなくなってしまうので、撮影する状況によってはズームレンズのほうが有利に働く場合もあります。
しかしズームレンズは単焦点レンズと比べると開放F値が大きく、暗いレンズが多くなってしまうことと、単焦点レンズに比べるとボケにくいデメリットがあります。明るいズームレンズも発売されていますが、大きく重くなり、価格も高価なものが多いですね。
ズームレンズのメリット
- 焦点距離が可変できるため、引きや寄りが自由自在
- 1本で幅広いレンジに対応するため、持ち運ぶ機材を少なくできる
- 望遠や広角を頻繁に切り替える被写体やシーンなどは非常に有利
ズームレンズのデメリット
- 単焦点レンズに比べると明るさやボケ、画質などが劣る(高級レンズを除く)
- 開放F値を小さくできないので、夜間の手持ち撮影が苦手
- 全体的に重くなるので、手や首が疲れやすい
- 明るい高級ズームレンズは高価なものが多い
超広角・広角レンズ
単焦点とズームレンズの違いについては、上記でお話をさせていただきましたが、続いて焦点距離による広角レンズについてご紹介いていきたいと思います。
超広角や広角レンズは、広い範囲を写すことができるレンズです。1枚のフレームに広範囲の景色を映し出すことができますので、写真をダイナミックに仕上げることができたり、狭い場所を効果的に写すことができるのがメリットです。
広角レンズはおおむね35mm以下(APS-Cなら24mm以下)のレンズのことを言い、さらに広い範囲を写せる超広角レンズは、焦点距離が20mm以下(APS-Cなら14mm以下)のレンズのことを言います。
ラインナップとしては、単焦点レンズのほか、ズームレンズも選択肢としてあり、超広角から広角の焦点域をカバーしているものが多くあります。
上の写真はフルサイズカメラで14mmの広角レンズで教室の室内を撮影。教室全体をフレームに収めることができます。
この写真は24mmの広角レンズで撮影。流れる雲と水面を広々と撮影できます。
広角レンズはおおむね35mm以下(APS-Cなら24mm以下)のレンズのことを言い、さらに広い範囲を写せる超広角レンズは、焦点距離が20mm以下(APS-Cなら14mm以下)のレンズのことを言います。
標準レンズ
標準レンズとは、人間の視野と同じくらいの画角のことで、フルサイズなら50mm前後、APS-Cなら30mm前後のレンズのことを言います。ちょうど人間の視野角と同じくらいになるため、見た目と同じくらいの範囲がフレームに収まるので、自然で違和感のない写真に仕上がるのが特徴です。
「カメラを始めたら、まずは標準レンズ」と呼ばれるくらいで、汎用性が高く構図や撮り方を勉強するのにもピッタリな焦点距離です。
単焦点レンズはもちろんですが、一般的な標準ズームレンズとよばれるものもこの焦点距離が含まれるレンズが多く、入門機を買ったときに付属してくるキットレンズも、標準レンズの焦点距離をカバーしています。動きながら撮影するスナップ撮影や旅の記録など、見た目に近い構図が撮れるのが魅力的です。
上の写真は富士山と景色を焦点距離50mmのレンズで撮影。違和感なく自然な構図に仕上がります。
夜間のパレードの様子を50mmで撮影。このようなスナップ写真にもちょうどいい画角です。
望遠レンズ
望遠レンズはその名の通り、遠くのものを拡大して撮影できるレンズです。遠くの景色、人物、動物など、近くに寄れないものを撮るときや、遠くの被写体を引き寄せて撮影するときに使います。
望遠レンズは焦点距離に応じて呼び名が少し変わり、中望遠・望遠・超望遠と3つに分かれます。ただし厳密な定義はないため、目安として以下のように線引きするとよいでしょう。
- 中望遠 焦点距離が70~150mm(APS-Cなら55~100mm)
- 望遠:焦点距離が150~300mm(APS-Cなら100~250mm)
- 超望遠:焦点距離が400mmを超える(APS-Cなら300mmを超える)
中望遠レンズは主題を強調するシーンに最適
中望遠レンズはそれほど遠くのものを引き寄せて写すことはできませんが、標準レンズに比べると背景をぼかすのが得意なため、被写体(主題)を強調するシーンに向いています。とりわけポートレートは得意であり、85mm~100mmのレンズがよく使われます。
焦点距離70mmで伸びる植物のみにクローズアップしてみました。手前や奥が程よくボケるため、被写体のみを強調させることができます。廉価なズームレンズではなかなかボケが出ませんが、単焦点レンズや明るいズームレンズほどボケやすいため、主題が引き立ちます。
望遠レンズはさまざまなシーンで使える
焦点距離が200mm前後の望遠レンズは遠くのものを切り取ったり、被写体が遠くにあるものを引き寄せて撮影することができます。どのような構図で切り取るかは撮影者の腕次第ですが、遠くのものが近くに見える圧縮効果もあり、広角とは違った雰囲気に写真に仕上がります。
焦点距離150mmで高台から工場を狙ってみました。近づけない被写体を拡大して撮影するには、望遠レンズが必須です。
200mmで撮影。遠くのものが近くに見える圧縮効果も遠近感があればあるほど大きくなります。
超望遠レンズは近寄れない被写体を撮る際に
よくスポーツなどの現場などでは、バズーカのような巨大なレンズを装着して撮影しているカメラマンを見かけます。
400mmを超える超望遠レンズはスポーツやレース、野鳥などの動物撮影など、近づけない被写体を撮影する際に向いています。しかし明るい超望遠レンズは初心者が手が出るような価格ではないため、こだわった人向けのレンズと言えます。
焦点距離600mmで小さい野鳥を撮影。超望遠レンズがあればかなり離れた場所からでも被写体をはっきりと捉えることができます。
マクロレンズ
マクロレンズは等倍撮影ができるレンズのことを言います。簡単に言いますと小さい被写体をより大きく撮影することができるレンズで、被写体に近寄って撮影ができます。花の内部や昆虫などを撮影するのが得意な虫眼鏡のようなレンズと言えます。
マクロレンズは「正統派マクロレンズ」と、「マクロ撮影が可能なレンズ」の2つがあります。正統派マクロレンズは最大撮影倍率が1.0倍のものを言い、マクロ撮影が可能なレンズは最大撮影倍率が1.0倍に満たないレンズのことを言います。
マクロレンズと言えるものは、基本的には等倍撮影(最大撮影倍率が1.0倍)のものですが、最大撮影倍率が0.5倍や0.7倍のものも「MACRO」と名前がついているレンズもあります。一般的なレンズは最大撮影倍率が0.2倍程度ですが、マクロ撮影が可能と表記されているレンズはそこら辺のレンズよりは寄って撮影ができるレンズです。しかしあくまでも「なんちゃってマクロレンズ」であり「正統派マクロレンズ」ではないので注意しましょう。
マクロレンズで10円玉を撮影。小さいキズや表面の様子がよく分かります。。
マクロレンズは単にクローズアップ撮影が得意ということではなく、風景やポートレート撮影にもよく使われます。マクロレンズは100mm前後の焦点距離のものが多いので、普段使いの中望遠レンズとしても十分代用できます。
コンバージョンレンズ
コンバージョンレンズはカメラとレンズの間に取り付けるアタッチメントで、手持ちのレンズの焦点距離を伸ばすことができます。テレコンバーター(テレコン)やエクステンダーとも呼ばれており、焦点距離を1.4倍にするものと、2倍にするものが発売されています。
例えば200mmの望遠レンズに2倍のコンバージョンレンズを取り付ければ400mm焦点距離で撮影ができます。400mmの望遠レンズを買うにはかなりの予算が必要になりますが、数万円で購入できるコンバージョンレンズを使えば手軽に超望遠撮影が可能になります。
コンバージョンレンズを装着することである程度の画質の低下は仕方ありませんが、1.4倍より2倍のほうが画質が低下しやすく、開放F値が下がるといったデメリットもあります。
デジタル一眼レフ・ミラーレス一眼カメラの交換レンズの種類や特徴 まとめ
- 交換レンズは大きく単焦点レンズとズームレンズの2種類に分かれる
- 単焦点レンズは画質重視、ズームレンズは使い勝手が重視される
- レンズの焦点距離によって広角・標準・望遠に分かれる
- 画角によってそれぞれ特徴が異なるため、撮影シーンや目的によって使い分ける
- マクロレンズは拡大撮影が得意だが、風景やポートレートもこなせる
- コンバージョンレンズを使えば手軽に焦点距離がアップできる
このように交換レンズの種類はたくさんあるため、新たなレンズを探す場合は、主にどのようなシーンで使うのかをイメージしながらレンズを見つけることが大切です。上記を参考に交換レンズの種類を理解していただき、お気に入りのレンズを見つけてみてください。