寒いところから急に暖かいところへ物を移動させると、温度差による結露が発生しますが、カメラやレンズも例外ではなく、内部が結露してしまうと曇りやカビ発生の原因になります。また風のない夜間や早朝の撮影では、夜露や霜がレンズに付着することで、いつの間にか曇ってしまうことも。
ここではカメラやレンズが結露する理由や対策を中心に、夜露や降霜の発生しやすい条件や対策についてもご紹介したいと思います。
物の結露とは
結露とは、空気中の水蒸気が冷えたものに付着することで、曇ったり水滴がついたりすることを言います。私たちが普段生活している中でも、結露による事例は簡単に見つけることができます。
- 眼鏡をしていて、熱いラーメンやうどんを食べるときに眼鏡が曇る
- コップに冷えたビールやジュースを入れると、コップの外側に水滴がたくさんつく
- 冬場に部屋の窓ガラスが曇っている
- 夏場に冷蔵庫や冷凍庫から物を取り出すと、すぐに表面が濡れてくる・・・など
これらはすべて急激な温度変化が原因で、室温に対してものの温度が極端に低いと、水滴が付着したり曇ったりします。
カメラやレンズはこんなシーンで結露しやすい
それでは実際にカメラで撮影を行う際、どんなシーンで結露が発生しやすくなるのでしょうか。いくつか事例を挙げてみました。
寒い屋外から、多湿で暖かい室内へ機材を移動させたとき
危険度が最も高いのがこのパターンです。冬場の寒い屋外で冷え冷えの機材を、暖かい室内へ移動させるとカメラやレンズが一気に曇りだします。要は冷蔵庫や冷凍庫にカメラやレンズを入れておき、そのまま常温へ出してきたのと同じ状況ですから、容易に水滴が付着するのは誰でも想像できますよね。
特に加湿器を入れていたり、煮炊きしている台所に持って行ったりと、室内の湿度が高い場合はさらに危険度が高くなります。機材の表面だけでなく、内部にも曇りが生じることがあります。
このほか、寒い屋外から電車やバスに乗るときも要注意。車内が混雑していると湿度が高く、一気に曇ってしまいます。このようなシーンが想定されるような場所へ行くときは、必ず対策しましょう。
涼しくエアコンの効いた室内から、蒸した屋外へ出るとき
夏場の遠征ではよくあるパターンですが、車のエアコンをガンガンにかけたまま現地へ到着し、暑い屋外へそのままカメラを持って出かけてしまうケース。特に湿度が高い日は要注意で、屋外に出た瞬間に眼鏡が曇るような環境では危ないと言えます。
カメラを助手席の前にむき出して置いていたり、ヘッドレストに引っ掛けたりし、エアコンの風がカメラに直接あたっているような状況だとなおさら危険です。
天体撮影や夜景撮影など、夜間・早朝の長時間撮影時
夜露は冷えた機材に空気中の水分が少しずつ付着し、曇りや水滴となって現れる現象です。特に風のない静かな夜間、日中と夜間の気温差が大きい早朝などに発生しやすく、気温が高いと夜露となって現れ、気温が低いと霜の付着になります。
特に秋から冬、春先にかけて発生しやすく、朝になると車や草木に水滴や霜がついているのをよく見かけると思いますが、夜間に撮影を続けることでカメラやレンズ表面に水滴が付着します。また早朝に霧が発生するようなコンディションも要注意です。
夜露は内部に付着することは少なく、防水・防滴性能の高いカメラやレンズならある程度へっちゃらですが、レンズに付着すると曇ってコントラストが低下するため、気が付かないうちに写真が全滅という危険があります。
カメラやレンズが結露すると、どんなデメリットがある?
「曇っても、そのうち乾いてしまうから大丈夫でしょ?」と軽い気持ちで考えている人もいると思いますが、皆さんが思っているよりもダメージが深刻な場合もあり、結果としてカメラやレンズの寿命を縮めてしまうこともあります。
レンズ内部の結露により、慢性的な曇りやカビ発生の原因になる
レンズ外側の曇りや水滴の付着であれば、クロスで拭いてしまえばそれで終わりですが、結露は手の届かないレンズの内部で発生することも多く、それが乾く過程でシミや曇りが発生したり、後にカビが発生する温床となることもあります。
電源系の不具合・基板や金属部分の腐食や劣化の原因になる
水滴の付着はレンズだけではなく、ありとあらゆる部品に発生します。金属部分や電源基盤など、電子系の部品に水滴が付着すると、誤作動やショートの原因となり、最悪カメラが壊れてしまうこともあります。
また、接点や内部の金属部分に錆や腐食が起こることで動作不良を起こしたり、機材の寿命を縮めてしまう原因にもなります。
レンズ曇って台無しになる
長時間の天体撮影や夜景撮影では、気が付かないうちにレンズが曇ってしまうことがあり、途中から作品が全滅・・・ という事態になることもあります。夜露は機材が冷えてくることで少しずつ付着し始めるため、最初は曇っていなくても、時間の経過とともに曇り始めることが多いです。
カメラやレンズを結露させないためには、急激な温度変化を避ける
カメラやレンズを結露させない一番の対策は、急激な温度変化を避けることです。要はゆっくりとした温度変化にしてあげればいいということですね。それでは具体的な対策方法をご紹介しましょう。
機材をむき出しにして暖かい場所へ移動しない
カメラを首にぶら下げたまま、寒い場所から暖かい場所へ移動させるのは厳禁です。すぐに水滴が機材に付着してダメになります。むき出しのままよりは、カメラバッグなどに入れたまま移動させたほうがかなりマシです。
密閉できる袋や簡易ドライボックスに入れる
寒い屋外からバスや列車などに乗るなど、やむを得ない状態になりそうな場合は、あらかじめカメラやレンズを密閉できるチャック付きの袋などに入れておきましょう。温度差があっても湿度が低ければ結露はしにくいため、袋に入れる場合はできるだけ中の空気を抜いておき、シリカゲルなど除湿剤を入れておくと完璧です。
機材が多い場合は密閉容器や簡易ドライボックスなどに入れておけば、急激な温度変化を防ぐことができます。
密閉する袋や容器がない場合は、バッグにいれたまま上着やタオルなどを巻いておくだけでも効果がありますので、とにかく外気に触れないように防御しましょう。
寒いところから家に帰ってきたときは、置き場所を考える
例えば、寒い場所から家に帰って帰ってきたときは、いきなりリビングなど生活場所に機材を移動させるのではなく、暖房が届いていないエリア(玄関や物置など)へ一旦置くなど、できるだけ温度変化の少ない場所に置きましょう。
カメラやレンズを結露させてしまったら
カメラやレンズを誤って暖かい場所へ移動してしまい、すでに結露が始まっている状態であれば、まずは速やかにバッテリーとメモリーカードを取り外し、電源を入れないようにします。
次にその部屋から真っ先に移動させ、できるだけ涼しい場所、湿度が低い場所へ機材を移動します。温度差があれば結露はどんどん酷くなるため、初動が肝心です。
結露が酷い場合は外側を拭き取るなどして大まかな水分を除去し、レンズの内部が曇っているようなら涼しい場所に移動してから扇風機を当てておくなどして内部の水分を飛ばしましょう。
水分が除去できたら、たっぷりの乾燥剤の入った密閉袋や簡易ドライボックス、防湿庫に入れて1日以上放置しましょう。途中でバッテリーを装着したり、電源を入れるのはショートの原因になるので控えます。
ドライヤーの温風使用やストーブ、ファンヒーターの前に置くのは絶対にやめましょう。温度差が急激になりすぎてレンズや本体を変形させたり傷める可能性があり、状況を悪化させる可能性があります。
夜露・霧・降霜対策
夜間の夜景撮影や星空の撮影、早朝のマジックアワーや風景の撮影など、夜間の撮影でやっかいなのが夜露や霧、冬場は降霜によるレンズや機材の結露や凍結です。
夜露や霧・降霜の発生しやすい条件
夜露は昼間温められた空気が、夜間や早朝に冷え込むことで温度が下がり、抱えられなくなった水蒸気が水滴となって現れる現象です。
つまり、日中の温度差が大きい日に発生しやすく、また日中の湿度が高いときほど、風がなく穏やかな日ほど発生する確率が高くなります。霧も似たような条件で発生しやすく、春や秋など日中の寒暖差が大きい夜間や早朝によく発生します。
一方霜も夜露と同じで、温度が低いため水ではなく氷の結晶として付着し、堆積していくことを言います。付着させる物体の温度が0度以下になると霜になります。
- 前日の日中はよく晴れて、気温がとても上がって暖かくなった
- 撮影時には風がなく、気温が下がって寒くなっている
- 天気予報で濃霧注意報が出ていたり、放射冷却で冷え込むと言っている
レンズヒーターで夜露や霜の付着を防ぐ
夜露や霜によるレンズの曇りを防止するには、機材の温度低下を防ぐことが一番の対策です。そのためレンズヒーターと呼ばれるアイテムが販売されています。
レンズヒーターは、レンズ用のカイロとイメージしていただければわかりやすいと思いますが、レンズの筒に巻き付けて使うことで暖かくし、夜露や霜の付着を防ぐことができます。
外部電源(モバイルバッテリーなど)を使用すれば、長時間の使用も可能のため、長時間の夜景撮影や天体撮影には必須のアイテムです。
レンズヒーターメーカーと言えば、安定の天体撮影機器メーカーのビクセンがおすすめです。
以前は天体撮影機器のメーカーが多く発売していましたが、近年では安い中華メーカーのものが2千円程度で買えるようになってきました。一度チェックしてみてください。
カメラやレンズの結露する理由や夜露・降霜の曇り対策について まとめ
- 冷たいところから湿度の高い暖かい場所へものを移動させると、結露する
- 冬場の屋外から室内、夏場の室内から屋外、夜間や早朝の長時間撮影時が要注意
- 結露は場合によってはレンズのカビや曇り、電子部品の腐食などのリスクが高い
- 夜間や早朝の撮影は知らない間にレンズが結露して作品が全滅することもある
- 結露対策は急激な温度変化(冷⇒暖)を避けることが大切である
- 密閉できる袋や簡易ドライボックスに入れておくと、結露が発生しにくい
- 万が一結露してしまったら速やかに対処をすることが大切
- 夜露や霜によるレンズの曇りはレンズヒーターを使えば解決
結露は知らないうちに発生していることもあり、特に冬場に暖かい部屋にカメラを持ち込むときは注意しましょう。