三脚を選ぶうえで大切なこととして、段数の違いとロック方式の違いがあります。三脚には3段や4段、それ以上というものがあり、ロック方式にも回転式やレバー式があります。ここでは、三脚の段数の違いによるメリットやデメリットをはじめ、ロック方式の違いについて解説していきたいと思います。
三脚の段数の違いについて
三脚の段数とは
三脚は、撮影シーンによって脚の高さを変えたり、移動時に持ち運びしやすいように異なる太さのパイプを組み合わせて伸縮できるようになっています。
この異なるパイプの数のことを段数と呼び、3段であればパイプ構成は3つ、4段であればパイプ構成は4つとなります。
段数が多いほど縮長が短くなる
例えば、脚が1mの場合、3段に縮めると、縮めた長さは約33.3センチになります。しかし4段に縮めると、縮めた長さは約25センチになります。どちかが短いとかと言えば、もちろん4段のほうがコンパクトになりますよね。
このように段数が多いほど、縮めたときの脚が短くできるため、コンパクトで持ち運びがしやすいといったメリットがあります。通常の三脚ですと、3段か4段のラインナップが豊富ですが、持ち運びに重視したトラベル三脚などは5段、6段、7段以上とさらに縮長が短くなるモデルも発売されています。
段数が少ないほど安定性が増し、セッティングもしやすい
段数が多いほどコンパクトで持ち運びしやすいメリットがありますが、今度は段数が少ないほうもチェックしましょう。一般的な三脚は3段が最も段数が少なく、一部2段というのもありますが、テーブルフォト向けのミニ三脚や特殊な用途で使うスタジオ三脚などに限られます。
3段、4段、5段の三脚で比較しますと、段数を多くすればするほど、脚の先端の太さは細くなっていきます。細くなればなるほど不安定になりますし、ジョイントの数も増えるとそれだけグラグラしやすくなります。ですから4段よりも3段のほうが牢固で安定性が増します。風や重い機材の対する強度は3段のほうが勝っているため、本来の三脚としての機能は段数が少ないほど良くなります。
また、実際にやってみればわかりますが、3段よりも4段、5段のほうが伸ばしたり縮めたりする箇所が多くなるため、三脚のセッティングの手間がかかります。三脚の設置場所を頻繁に変えたりするシーンでは、段数の多い三脚はセットや片付けが大変なのが実感できるでしょう。
ただし、大型の三脚については4段を選んでも安定性の不安はほとんどありません、大型の場合は最大まで脚を伸ばすと目線のはるか上まで高くなるため、通常使用であれば4段目の脚を伸ばす機会がまりないからです。
持ち運び重視なら4段・安定性重視なら3段を選ぼう
ご説明した通り縮めた寸法が短くなるのは4段です。本格三脚撮影をしたいけれど、列車やバスなど公共交通もよく利用し、あまりかさばる三脚はちょっと・・・という方は迷わず4段を選びましょう。
安定性とレスポンスの良さ、三脚としての本来の姿を求めるのであれば迷わず3段を選びましょう。列車やバス、人通りの多い場所など以外であれば、3段でも全く問題なく移動は可能です。
更に持ち運びを重視するなら5段以上がおすすめ
いくら4段が持ち運びしやすいと言えども、例えば立った状態での目線の高さまで高くできる三脚であれば、収納時の長さは40cmほどになります。リュックに入れて持ち運べなくはないですが、トレッキングや旅行、お出かけスナップなど、他にもたくさん荷物を持って行く場合はこれでもかさばってしまいます。
そんな時は5段以上の三脚を選びましょう。本格的な夜景の撮影や、重い機材を載せての撮影には向きませんが、5段以上になると縮めた長さが30センチを切るようなものも発売されています。
ロック方式の違いについて
伸ばした三脚の脚はロックしないとスルスルと動いてしまう
伸ばした三脚の脚は、そのままではスルスルと動いてしまって固定することができません。そのため、任意の場所で固定できるようにロックさせるものが付いています。
ロック方式には主に回転式(ナットロック式)とワンタッチ式(レバーロック式)の2種類が主流で、段数の多いトラベルタイプは、脚の先端をひねるだけでロックできたりなど、特殊なロック方式が採用されているものもあります。
回転式(ナットロック式)
回転式(ナットロック式)は、脚の継ぎ目の部品をネジのように回すことによって、固定したり緩めたりできる方式のことです。昔からあるロック方式であり、大型の三脚やプロ向けのハイスペック三脚に採用されていることが多いタイプです。
ワンタッチ式(レバーロック式)に比べると、回転させてロック・解除を行うため、一見すると大変そうに思いますが、ロックと解除はナットを90度程度回せばできてしまうため、一回の手のスナップで可能です。くるくると何回転もする必要がないので、意外に時間はかかりません。
ワンタッチ式(レバーロック式)
ワンタッチ式(レバーロック式)は小型三脚を中心に近年多く採用されているロック方式で、レバーを開いたり閉じたりすることで、簡単に脚を締めたり緩めたりできるのが特徴です。比較的操作が楽で、締まっているか緩んでいるかも簡単に目視で確認できるため、初心者の方にも扱いやすい方式です。
回転式に比べると機構が複雑で、やや出っ張るという特徴があり、金具の分だけ重くなるので、総重量は回転式に比べると数百グラム重くなる傾向があります。
それぞれのメリット・デメリットは?
ロック方式 | 回転式(ナットロック式) | ワンタッチ式(レバーロック式) |
メリット | ・構造が簡単でメンテナンスしやすい ・自分の力加減でしっかり固定できる ・継ぎ目があまり出っ張らない ・慣れればとても素早くセットできる ・軽い | ・慣れが不要で初心者にも扱いやすい ・ロック状態が目視で確認しやすい ・ロックの開閉が素早くできる ・脚を落っことすことがない |
デメリット | ・締め付け、緩めに時間がかかる ・ロック状態が目視で確認できない ・脚を落っことす可能性がある ・素早く操作するには慣れが必要 | ・徐々にロックが緩くなる ・定期的なトルク調整が必要 ・特に寒冷時は指が痛い ・継ぎ目が出っ張る ・フルメンテナンスが難しい ・重い |
上の表のように、どちらも一長一短があるため、一概にどちらが良いというのは難しいところではあります。
回転式よりもワンタッチ式のほうが慣れが要らないため、初めてカメラや三脚をデビューするにはおすすめと言えます。また、ワンタッチ式は見れば締まっているのか、緩んでいるのかもすぐにわかるため、カメラをセット中に突然脚が緩んで下がってしまい、カメラやレンズを落としたりぶつけたりするリスクも低くなります。ワンタッチ式は小型・中型三脚を中心に多く発売されていますので、カメラ初心者の方はワンタッチ式を選んでみてもよいでしょう
ただし、ワンタッチ式は使っていくうちに締め付け力が弱まったり、場所によって締め付け具合が変わってしまったりします。定期的に専用のレンチや六角レンチなどを使って、ちょうどよいトルクになるように調整が必要です。
そのままにしておくと固定力が弱まってしまい、撮影中にズルズルと脚が下がってきたりなど、思わぬトラブルが発生することもありますので、便利な故に注意する点もあります。
一方回転式のほうは、カメラに慣れた方の上級者向けと言われていますが、扱い方に慣れてしまえば、メリットはワンタッチ式を上回るので、初めから初心者の方がチャレンジしてもよいとは思います。
回転式はロック状態が目視で確認できないので、締め付け、緩め時は1つ1つの作業を確実に行う必要があります。セット時に1つでも緩んでいれば、三脚が傾いたりして事故になることもありますし、収納時に緩んでいると、移動時にすっぽ抜けて脚を落として紛失してしまうリスクもあります。
しかし操作に慣れると素早く締め付けや緩めもできるため、ワンタッチ式と変わらない速度でのセッティングも可能。固定も自分の力加減で締め付けられるので、ワンタッチ式のような定期的なトルク調整も不要です。また、構造が簡単でメンテナンスや掃除もしやすく、シンプルで出っ張らないなど、メリット面も多いのが特徴です。
- 三脚を使う機会が少なく、操作は極力簡単なほうがいい初心者の方はワンタッチ式がおすすめ
- 三脚を使う機会が多く、ガンガン三脚撮影をしていきたい人や、頑張って操作に慣れて使いこなしたい人は回転式を選ぶとよい
ベルボンのウルトラロックは慣れれば非常に使いやすい
三脚メーカーに老舗、ベルボンのトラベル三脚などで採用されているウルトラロックは、脚の先端の石突部分を回すだけで締め付け、緩めができる優れものです。回した回数によって引き延ばせる段数を選ぶことができるほか、接続部に余計な出っ張りがないので軽量でコンパクトに作られているというメリットがあります。
扱いには熟練した慣れが必要ですが、操作に慣れてしまえば非常に扱いやすいと言えますので、旅行やトレッキングなど、とにかく持ち運び重視の三脚をお探しであれば、ベルボンのウルトラロックを採用している三脚をチェックしてみてください。
三脚の段数とロック方式の違いについて まとめ
- 本格三脚は3段と4段の2種類があり、トラベル三脚はそれ以上の段数がある
- 段数が多いほど縮めたときの長さがコンパクトになる
- 4弾よりも3段のほうが安定性が高く、セッティングの手間もかからない
- 持ち運び重視なら4段・安定性重視なら3段がよい
- ロック方式は回転式とワンタッチ式の2種類がある
- どちらもメリット・デメリットがあるので使用用途をよく考える
三脚を選ぶうえで段数とロック方式の違いはとても重要です。上記を参考にしてそれぞれのメリットとデメリットを理解していただき、三脚を選ぶ参考にしていただければ幸いです。