デジタルカメラで撮影した画像を確認したり、撮った後にパソコンなどで見てみると、明るい部分が真っ白になってしまったり、暗い部分が真っ黒になってしまった経験はないでしょうか。これらは白飛びや黒つぶれと呼ばれており、カメラのイメージセンサーの限界を超えることで起こってしまう現象です。ここでは白飛びと黒つぶれの原因や確認方法、対処法などについてご紹介したいと思います。
ダイナミックレンジの範囲を超えるものは撮影できない
カメラに搭載されているイメージセンサー(撮像素子)は、光を電気信号に変える役割があり、フィルムと同じ働きを持っています。イメージセンサーには明るさの差を記録できる範囲があり、これをダイナミックレンジと呼びます。ダイナミックレンジの幅が広ければ広いほど、より明暗差が大きいところでも記録することができますが、いかに高性能なカメラであっても、人間の目ほどダイナミックレンジは広くありません。
ですから、ダイナミックレンジの限界を超えてしまうと、明るい部分が白一色で抜けてしまったり、逆に暗い部分が真っ黒につぶれてしまうという現象が起きます。これが白飛びと黒つぶれであり、できるだけ白飛びや黒つぶれな起きないように露出を調整することが、写真上達のコツとも言えます。
ダイナミックレンジについてはこちらのコンテンツで詳しく解説しています
白飛び
白飛びとは、本来明るさの強弱があるにもかかわらず、カメラで写すと白一色になってしまう現象のことを言います。言葉で説明しても難しいので、下の写真をご覧ください。
木造校舎の風景を、少し明るめに撮影した写真ですが、空を見てみると白一色のように見えます。
これは少し露出を変えて、さきほどの写真より少し暗めに撮影したものです。白一色だった空は、実は青空の部分と雲の部分があったことが分かります。
一枚目の写真は、明るく撮りすぎてしまったため、本来青空と白い雲があった明るい部分が白一色となってしまいました。このように撮影してしまうと、写真のデータ上も「白」としでしか記録されていないため、後になってレタッチソフトなどで修正をしようとしても、思うように修正することができなくなります。
このように本来明るさの諧調があるにもかかわらず、カメラのイメージセンサーの限界を超えてしまうことで白一色に記録されてしまうことを白飛びと言います。
黒つぶれ
黒つぶれとは白飛びの真逆で、暗い部分が黒一色になってしまうことを言います。
それでは、まずは下の写真をご覧ください。
ある部屋の中から窓を撮影しましたが、窓はそれなりに写っているものの、周りは真っ黒に見えます。
次に露出条件を変えて少し明るく撮ってみました。真っ黒で何も見えなかったところは白壁であったことが分かります。
これも白飛びと同じ現象であり、カメラのイメージセンサーの限界を超えてしまうと、暗い部分は黒一色で記録されてしまうことがあります。これを黒つぶれと呼び、諧調が失われているため、黒で記録されたものは後からの修正が難しくなります。
白飛びや黒つぶれの原因
露出が合っていない
白飛びや黒つぶれの原因として多いのが「露出が合っていない」ことが挙げられます。特に明暗差が大きい被写体では、カメラの露出計も万能ではないため、明るく撮りすぎてしまったり、逆に暗くしすぎてしまうことがあります。
被写体の明暗差が大きすぎる
極端な例ですが、トンネルの中から外に向けて撮影したとしましょう。トンネルの中は真っ黒で、外はとてもまぶしいです。こんな状況では人間の目でも見づらい状況と言えますので、カメラで撮影すれば真っ黒か真っ白になるでしょう。ある程度露出を補正すれば、どちらかの明るさに合わせることは可能ですが、あまりにも明暗が両極端な被写体の場合、明るい方も暗い方も諧調をつけて記録するのは難しいと言えます。
カメラが記録できる明るさの範囲を超えている
前述でも少しお話させていただきましたが、カメラのイメージセンサーにはダイナミックレンジと呼ばれる記録できる明暗差の範囲があります。この範囲を超えてしまうと白飛びか黒つぶれが発生します。ダイナミックレンジの幅が広いほど大きい明暗差の被写体でも諧調をつけて記録できます。
ダイナミックレンジはカメラやイメージセンサーの性能によって変化しますが、一般的なスマホやコンデジなどより、デジタル一眼レフ・ミラーレス一眼カメラのほうが幅が広いです。
白飛びや黒つぶれをできるだけ防ぐには
被写体の明暗差によっては白飛びや黒つぶれをゼロにするのは難しいと言えますが、少し工夫することで防ぐことができたり、失敗を少なくすることができます。
ヒストグラムを見ながら露出条件を変えて何枚も撮影する
ヒストグラムは写真の中に含まれる明るさの構成をみることができるため、撮った写真が白飛びしているか黒つぶれしているかをビジュアル的にチェックすることができます。ヒストグラムを確認しながら最適な露出になるように何度も条件を変えて撮影するとよいでしょう。
ヒストグラムについてはこちらのコンテンツで詳しく紹介しています
逆光など、極端な明暗差の被写体は避ける
逆光は一般的に明暗差が大きく、カメラでの記録が苦手なシーンです。逆光のまま背景に明るさを合わせると暗い方は真っ黒になり、暗い方に明るさを合わせると背景が真っ白になります。逆光での撮影はできるだけ避けるようにし、どうしても撮影する場合はHDR合成やストロボを使うなどすると良いでしょう。
記録モードをRAWにする
RAWで記録するとデータ量が大きくなる分、多くの色や明るさの情報を記録することができます。一見真っ白に見えても、レタッチソフトなどで調整できる場合もありますので、RAWで記録しましょう。
ISO感度はできるだけ低くする
ISO感度は上げれば上げるほど速いシャッター速度で記録できますが、ダイナミックレンジの幅が狭くなってしまい、特に暗い部分でのノイズが目立ちます。できるだけISO感度は基準感度に設定して撮影するようにしましょう。
あえて飛ばしてしまったり、つぶしてしまうのも作品の1つ
長ったらしく白飛びや黒つぶれについて語ってきましたが、このような写真が失敗写真というわけではありません。
明らかに露出を失敗しているような写真は救いようがありませんが、ハイキーな写真やローキーな写真など、あえて白飛びで明るさを表現したり、黒つぶれをシルエットとして作品にしてしまう方法もテクニックとしては大いにあります。
露出に失敗しているものを除いては、それほど白飛びや黒つぶれにこだわる必要はありません。あまり意識しすぎると自分なりの写真を撮れなくなることもありますので、ごくごく自然な写真になるように心がけるのが上達するコツです。
あえてゆる~い写真を撮るのであれば、空を白で飛ばしてしまって、明るさを表現するのもよい方法です。
上の写真のように手前の木や山の影をシルエットにしてしまうことで、奥の夜景や空が引き立ちます。
カメラ・写真の白飛びと黒つぶれ まとめ
- 白飛びは明るい部分での諧調が失われ、白一色で記録される現象
- 黒つぶれは暗い部分での諧調が失われ、黒一色で記録される現象
- 白飛びも黒つぶれもそれぞれ単色で記録されているため、レタッチソフトでの修正ができない
- 露出不良や極端な明暗差があると白飛びや黒つぶれになりやすい
- ヒストグラムを使ったり、カメラの限界を知っておくと白飛びや黒つぶれが軽減しやすい
- 白飛びや黒つぶれをあえて作品として表現する方法もある
白飛びも黒つぶれも、本来はない方が後々の修正がしやすいというメリットがありますが、今のイメージセンサーの技術では、太陽のような明るさと、真っ暗闇のような状態を一度に記録することはできません。どこかで妥協点を見つけたり、自分の頭の中に描いているイメージを写真にするなどして作品にしてみてください。